ブックタイトル臨床現場で実践する薬学研究のススメ
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臨床現場で実践する薬学研究のススメ
444 母集団解析法を活用し問題点を解決する視点Population pharmacokinetic and pharmacodynamic analysis of linezolid anda hematologic side effect, thrombocytopenia, in Japanese patients4)研究の目的 LNZはオキサゾリジノン系の抗MRSA治療薬で,作用機序が従来の抗菌薬と異なることから,他の抗菌薬に対して耐性を示す細菌に対しても有効性が期待されている.薬物動態的特徴としては,高い組織移行性やほぼ100 %のBAを持つため注射剤から経口剤への変更が容易であるなど優れた特性が指摘されている.そこでSasakiらは,母集団薬物動態解析によりLNZの薬物動態の変動要因を同定し,変動要因に基づく用量調整の必要性を検討できないかと考えた.方法 LNZ を使用した日本人感染症患者を対象に,合計50人,135点(1 人あたり1 ~ 5点)の血中濃度データを用いて母集団薬物動態解析を行った.また,構築した母集団モデルに基づき,腎機能および肝機能の異なる背景を持った仮想患者に対し,規定の1日投与量1,200 mgおよびその半量600 mgでのAUC/MIC>100の達成率を確率的シミュレーションにより算出した.AUC/MIC>100は過去の報告から治療効果との関連性が認められている.結果 母集団薬物動態解析の結果,1次吸収過程を含む1-コンパートメントモデルによりLNZの血中濃度推移を適切に表現することができた.クリアランスはCL(L/hr)=2.85×(CLCR/60.9)0.618×0.472CIR(CLCRはクレアチニンクリアランス,CIRは重篤な肝障害がなければ0,あれば1を示す変数)と表現され,腎機能および肝機能がLNZのクリアランスに重要な変動要因として同定された.表1に示すように,確率的シミュレーションの結果,腎機能が高度に低下した患者および重篤な肝障害のある患者では,1日投与量を規定量の半量の600 mgとしても十分な治療効果が得られ,用量調整の必要性が示唆された.