ブックタイトル処方管理学

ページ
13/14

このページは 処方管理学 の電子ブックに掲載されている13ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

処方管理学

case 123とがあるため,併用する際は慎重に投与する必要がある.したがって,これらの薬の服用の有無を聴取する. さらに,脳梗塞,手術,消化管・尿路出血,臓器生検,血管穿刺あるいは外傷後,日の浅い患者は,アルテプラーゼ投与は禁忌または慎重に行わなければならない.したがって,既往歴なども詳しく聴取する.情報収集Q3 この薬が処方された時に注目すべき検査値や身体所見は? アルテプラーゼは脳出血のリスクが高い(出血性脳梗塞の発現率:31.1%)ことから,その投与に際し,迅速かつ慎重な適応判断が要求される.このため,日本脳卒中学会より2005年10月に「rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法 適正治療指針」が作成されており,さらに7 年後の2012 年10 月に「rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法 適正治療指針 第二版」が発表され,適応基準などを中心に大幅な見直しが行われている.本治療の適応外(禁忌),および慎重投与となる項目を確認し,本剤による治療の適否を判断する.また,脳血管障害発症後においては血圧の管理が重要となる.発症後経過時期ごとの降圧治療対象,降圧目標および降圧薬を表3に示す.本患者の受診時の血圧は169/105 mmHgであり,この時点基礎知識Q1 処方薬の薬理作用は?アルテプラーゼ薬効分類 血栓溶解薬〔遺伝子組換え組織型プラスミノゲンアクチベーターrecombinanttissue-type plasminogen activator(rt-PA)〕薬理 フィブリン親和性が高く,血栓に特異的に吸着し血栓上でプラスミノゲンをプラスミンに転化させる.これがフィブリンを分解し,血栓を溶解する.情報収集Q2 この薬が処方された時に患者から聴取すべき主訴は? 本剤は発症後4.5 時間以内の脳梗塞超急性期に使用する薬剤であり,本剤の治療効果は時間と共に低下する(症候性頭蓋内出血の危険性が高まるとの報告がある)ため,片麻痺や感覚障害が発症した時刻を確認する.ここで,発見時刻は発症時刻ではない.発症時刻が不明なときは,最終未発症時刻をもって発症時刻とする. また,血液凝固阻止作用を有する薬剤(ワルファリン,ダビガトラン,リバーロキサバンなど)および血小板凝集抑制作用を有する薬剤(アスピリン,チクロピジン,クロピドグレル,シロスタゾール,ジピリダモールなど)と併用すると,出血傾向が助長されるこ● アルテプラーゼ注 0.6 mg/kg(34.8万国際単位/kg)● 生理食塩液 50 mL総量の10%を1 ?2 分間で急速投与し,その後残りを1 時間かけて点滴静注処 方たある日の朝,片麻痺(右半身の手足の力が入りにくい)および感覚障害(右半身のしびれ)が出現したため,救急外来を受診し,脳血管障害疑いにて緊急入院となった.受診時の血圧は169/105 mmHg(2 回の平均)であった.MRI 画像にて左被殻部5 mmの梗塞像を認め,脳梗塞と診断された.