ブックタイトル医薬品のレギュラトリーサイエンス 改訂2版

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概要

医薬品のレギュラトリーサイエンス 改訂2版

94 臨床第Ⅰ相試験(Ⅰb 試験)として,少数例の患者を対象とし,安全性,忍容性評価および有効性のシグナルを得るために臨床薬理試験が実施されることがある.被験薬の作用機序/標的疾患に依存するが,病態生理学的に関連する適切なバイオマーカーが利用できれば,標的作用機序で治療薬になりうることを実証する第Ⅱ相Proof ofConcept(POC)試験の用法・用量をより科学的に設定することが可能である. 臨床第Ⅰ相試験の評価として重要な点は,得られた安全性,PK,PD のデータを,PK データを軸として統合し理解することである(図5-2).ヒトでのAUC,Cmax などの被験薬曝露の情報は,安全性,忍容性,PD の情報と関連づけられ,ヒトでの有効性が期待でき,かつ安全な用法・用量の設定に用いられる.また,モデリング& シミュレーションという方法論を用いて,PK-PD の関係性を定量的に記述できるモデルを構築すれば,POC 試験の用量・用法の最適化をより定量的にサポートすることができ,初期臨床開発戦略上,有用な方法になる3).3 ファーマコゲノミクス ファーマコゲノミクス(Pharmacogenomics)は,薬物応答と関連するDNA およびRNA の特性の変異に関する研究と定義され,薬物応答には,薬物の吸収およびそれ以降の体内動態,および効果(例:PD,薬物の有効性,副作用)が含まれる4).非臨床の薬物動態試験の結果から,遺伝子多型のある酵素・トランスポーターが代謝・排泄などの薬物動態プロセスに寄与すると予想された場合は,臨床第Ⅰ相試験のなかでファーマコゲノミクスを検討し,PK の個体差の原因探索が可能である.例えば,薬物の代謝過程に遺伝子多型のある代謝酵素(例えばCYP2D6 , 2C9,2C19)の関与が認められた場合は,被験者のDNA 試料を用い,代謝酵素の遺伝子型を調べ,PK と遺伝子型の関連性を研究する. 一般に,PK の個体差は,薬物の吸収,分布,代謝,排泄のプロセスに影響を与え図5-2 薬物を経口投与した時の血液中濃度の時間推移(左図)および薬物曝露とPD,毒性との関係     (右図)の概念図濃 度PK時 間反 応PD 毒 性濃 度