ブックタイトル精神科薬物療法マニュアル
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精神科薬物療法マニュアル
152第一世代抗精神病薬の特徴1 フェノチアジン系薬 フェノチアジン系薬1,2)は,クロルプロマジンやレボメプロマジンのアルキルアミノ側鎖群,プロペリシアジンのピペリジン側鎖群,ペルフェナジンやフルフェナジンなどのピペラジン側鎖群に分類される. アルキルアミノ側鎖群の特徴は,鎮静作用と催眠作用である.そのため,興奮や不穏を持つ患者に用いられ,不眠の強い患者の就床前薬としても処方される.ムスカリン性アセチルコリン受容体に対する親和性が強く,錐体外路性の副作用は比較的少ないが,口渇や尿閉などの末梢性抗コリン作用に基づく副作用が起こりやすい.また,α1 アドレナリン受容体への親和性を持つことから,末梢血管拡張作用による血圧低下(ふらつき)が見られる.また,制吐作用があり,悪心・嘔吐,吃逆にも適応がある. ピペリジン側鎖群であるプロペリシアジンは,アルキルアミノ側鎖群と作用・副作用ともに類似しているが,制吐作用は強くはない.臨床効果は,初期に情動(激しい感情)の調整,異常体験の消失があり,次第に自律性が回復する.プロペリシアジンの1%液剤は,過量服薬防止のため1 回量を希釈し,分解を避けるため1 時間以内に服用する. ピペラジン側鎖群は,力価が高いことが特徴で,制吐作用も強く,術前・術後の悪心・嘔吐にも用いられる.比較的,抗コリン作用が弱いため,錐体外路性の副作用が起こりやすい.フルフェナジンにはデポ剤があり,症状が安定した慢性統合失調症患者の維持療法に用いられる. フェノチアジン系薬剤などの抗精神病薬を長期大量投与していると,角膜や水晶体の混濁,角膜の色素沈着がみられることがある.精神疾患の患者では,水晶体などに混濁が生じて,視力が低下してきても自ら訴えること抗精神病薬 抗精神病薬は現在,第二世代抗精神病薬(SGAs)の登場により,第一世代抗精神病薬(FGAs)の臨床使用は,積極的には行われなくなっている.しかし,すでにFGAsで症状が安定していたり,代謝性の副作用が出やすいなどの理由がある場合には,FGAs が選択されることがある. わが国におけるSGAs は,1996 年のリスペリドンにはじまり,2001 年にはペロスピロンとクエチアピン,2002 年にはオランザピン,2006 年にはアリピプラゾール,2008 年にブロナンセリン,そして2016 年にはアセナピンが発売された1).1第4章 精神疾患治療薬の臨床薬理