ブックタイトル医薬品副作用アセスメント

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概要

医薬品副作用アセスメント

■ アレルギー性アナフィラキシーの起因薬の検出アレルギー性アナフィラキシーの起因薬の同定試験は,in vivo では皮内反応(intradermal test,IT),プリックテスト(prick test, PT),スクラッチテスト(scratch test, ST),in vitro ではヒスタミン遊離試験(histamine release test, HRT),薬剤誘発性リンパ球刺激試験(drug-inducedlymphocyte stimulation test, DLST),白血球遊走試験(leukocyte migration test, LMT)などの試験が推奨される3).また,重症の場合はIT でアナフィラキシーショックが誘発されることがあるので,in vivo ではPT から実施する.? 非アレルギー性アナフィラキシーの起因薬と発症機序非アレルギー性アナフィラキシーには,アスピリン過敏症(アスピリン不耐症またはNSAIDs不耐症),ヒスタミン遊離作用,補体活性作用などがある3).アスピリン過敏症はNSAIDs,ヒスタミン遊離作用はヨード造影剤,モルヒネ,グリコペプチド系抗菌薬,タキサン系抗がん薬,マンニトールなど,補体活性作用はフルオレセインやインドシアニングリーンなどの蛍光眼底造影剤によって誘発される.アスピリン過敏症の発症機序は,NSAIDs がマスト細胞のアラキドン酸カスケードでシクロオキシゲナーゼ(cyclooxygenase, COX)を阻害し,PG 類の合成を抑制してLT 類の産生を亢進する.LT 類の中でもLTC4,LTD4,LTE4 のようなシステニルロイコトリエンは気管支の平滑筋を収縮させて喘息を誘発する5).また,PGE2 は発熱,発痛,浮腫など炎症反応を誘発する一方で気管支や血管の平滑筋の弛緩や細胞膜の安定化など抗炎症作用も有する.そのため,PGE2 の産生抑制はマスト細胞のヒスタミン遊離を亢進して皮膚では蕁麻疹を誘発する6).したがって,アスピリン過敏症ではアスピリン(NSAIDs)喘息とアスピリン(NSAIDs)蕁麻疹が存在し,その1 割程度が重症化してショック症状を誘発する7).なお,アスピリン喘息では気道閉塞や呼吸困難は起こるが,蕁麻疹や血圧降下が起こることはほとんどない.ヒスタミン遊離作用は薬物自体がマスト細胞を刺激してヒスタミンを遊離し,ショック症状を誘発するものであるが,起因薬がマスト細胞のどのレセプターに作用するかは明らかになっていない.ただし, パクリタキセルなどのタキサン系抗がん薬はマスト細胞のToll 様受容体(TLR)4 に結合することがわかっている8).補体活性作用は,補体系第2 経路を活性化してC3a やC5a などのアナフィラトキシンを産生してマスト細胞からヒスタミンなどのケミカルメディエーターを遊離してショック症状を誘発すると考えられている.また,蛍光眼底造影剤だけでなく,ヨード造影剤にも補体活性作用があることが明らかになっている.? 処置/治療初期対応として仰臥位にして下肢を挙上(約15 ?30cm)させる4)(心拍出量と脳血流量の確保).ただし,嘔吐や呼吸が苦しい場合は側臥位にし,さらに呼吸困難な場合は「頭部後屈顎先挙上法」を行い,それでも改善しない場合(強い咽頭浮腫)は,気管内挿管(不可能の場合は輪状甲状間膜切開)を実施する(気道確保:Airway,A).必要に応じて酸素投与(フェイスマスクあるいは経鼻エアウェイで6 ?8L/min)を行う(呼吸管理:Breath,B).さらに,胸部圧迫法で心肺蘇生を1 全身障害アセスメント79