ブックタイトル患者指導のための剤形別外用剤Q&A

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概要

患者指導のための剤形別外用剤Q&A

2でS 状結腸に待機した糞便の予備軍が直腸に移動し,排便反射によって肛門管が開くことで排泄されます.本来,直腸は栄養物の吸収を目的とした消化管ではないため,小腸と比べて粘膜表面のひだが少なく,絨毛も少ないですが無数の血管が分布しています.直腸に投与された薬物は直腸内分泌液に溶けた後,直腸の上皮細胞を経てこれらの血管ヘと吸収されます.ヒトの直腸内分泌液はpH7 ?8 で平均3 mL 存在するといわれており,胃液や小腸液と比較すると著しく少なく,このことは坐剤の直腸内からの吸収を考える上で重要な要因です.直腸と経口の投与経路の違い 経口投与された製剤は,消化管を移動しながら薬物を放出します.放出された薬物は消化管壁に移動し,消化管粘膜より吸収された後,門脈を経て肝臓の初回通過効果を受けます.そのため全身循環血中に到達できる活性型薬物は減少し,生物学的利用率が低下することが知られています.一方,薬物を坐剤として直腸内に投与すると直腸粘膜から吸収された薬物は,中,下直腸静脈から内腸骨静脈を介して直接下大静脈血液中に運ばれます.このため,経口投与にみられる初回通過効果や管腔内での分解を回避することができます.リドカインは初回通過効果の影響を大きく受けることが知られています.リドカインの経口投与時1)の生物学的利用率は34 % であるのに対して,直腸内投与では71 % です.肝臓における初回通過効果が回避できるのは直腸でも比較的下部に限られており,肛門坐剤もしくは溶けた薬物が腸管内を上部に向かって移動した場合には初回通過効果を受けることとなります.このことは薬物が吸収される直腸粘膜の血管分布に起因しています(図2).ニトログリセリンは経口投与時の生物学的利用率が1.8 % であるのに対して2),直腸内投与では吸収部位を無制限にした場合でも26.7 %,吸収部位を下部(3.5 cm 以下)に限図2 直腸粘膜の血管分布空 腸回 腸下大静脈肝静脈肝 臓脾静脈門 脈肛門下部1/3中部1/3上部1/3直 腸S状結腸下行結腸横行結腸下腸間膜静脈上腸間膜静脈下直腸静脈内陰部静脈中直腸静脈内腸骨静脈上直腸静脈S状結腸静脈左結腸静脈中結腸静脈右結腸静脈回結腸静脈回腸静脈空腸静脈上行結腸