ブックタイトル患者指導のための剤形別外用剤Q&A

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概要

患者指導のための剤形別外用剤Q&A

 第1 章 坐剤3定した場合には83.8 % という高い生物学的利用率を,さらに2.5 cm 以下に限定した場合には91.2 % とさらに高い生物学的利用率が示されています.すなわち,直腸上部1/3から薬物が吸収された場合,下腸間膜静脈から門脈,肝臓を通ることで内服剤と同様に初回通過効果を受け,直腸下部に限定するほど吸収後門脈系に入る薬物の量が減少します.直腸内投与は,初回通過効果の大きい薬物でかつそれに伴う血漿中濃度に大きな個人差を示す薬物についてはきわめて有効な投与経路です.人工肛門造設患者への投与 人工肛門造設患者への坐剤の投与に関する報告は少ないのですが,肛門部封鎖,人工肛門造設患者の直腸切除術患者(Miles 術群)にボルタレンR サポR 25 mg を単回投与した際の体内薬物動態が検討されています.健康人および肛門と排便機能温存の直腸切除術患者(LAR 術群)に比べてジクロフェナクナトリウムの最高血中濃度およびAUC は1/2 となり,この原因として人工肛門内への投与では初回通過効果を受けてしまうことや人工肛門からの薬物の排泄などが考えられると報告があります3).人工肛門内への無理な挿入により結腸の後腹膜腔の穿孔や後腹膜気腫,油脂性基剤の坐剤では融解液によって面版剥離を起こす可能性があるため,人工肛門に使用する坐剤は親水性基剤のものが望ましいと考えられており,人工肛門の管理と同時に患者への指導も必要です.これらの報告はあるものの人工肛門造設患者へ坐剤を投与する場合の有効性および安全性は確立されていません.そのため経口投与できる場合や経口投与が不可能な場合でも注射剤や貼付剤など他の投与経路を考慮し選択すべきです.坐剤に使用される基剤の種類と特徴は?坐剤に使用される基剤は,大きく分けて油脂性基剤と水溶性基剤に分類されます.油脂性基剤の融点 油脂性基剤の融点は35℃前後と体温よりも低く,体腔内に挿入されると体温によって徐々に融解し薬物が放出されます.主な油脂性基剤として以前は天然のアオギリ科の種子から得た脂肪で融点31 ?35℃のカカオ脂が多く用いられていましたが,結晶多型の問題から近年はあまり用いられておらず,現在は半合成油脂性基剤のハードファット〔ウイテプゾールR(表1),ホスコR 〕が用いられています.ハードファットは組成C12 ?C18までの飽和脂肪酸のモノ,ジ,トリグリセリドの混合物であり,混合比率により融点,融