ブックタイトル患者指導のための剤形別外用剤Q&A

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概要

患者指導のための剤形別外用剤Q&A

4解範囲,粘度,乳化性,主薬分散性が異なります.ハードファットにはいくつかのタイプがあります(表1).それぞれの特徴を把握して主薬に適した基剤を選択することができます.モノ,ジをほとんど含まず大部分がトリグリセリドで水酸基価が非常に低く,薬物の安定性を考えた場合に最も理想的なH タイプ,粘膜への薬物の分散性に優れ乳化性があるため膣坐剤に使用可能なS タイプ,体温よりも高い融点を示すため他の基剤と混合することで融点が調節でき,融点降下作用のある主薬を配合する場合に使用することができるE タイプなどがあります.水溶性基剤の融点 水溶性基剤の融点は,体温よりも高く50 ?60℃であり,体温では融解せず直腸内にある約2 ?4 mL の体液で徐々に融解することで薬物が放出されます.主な水溶性基剤としてエチレンオキシドと水との付加重合体であるマクロゴールやグリセリン,ゼラチン,水を加熱処理し得られるゲル状の半固形のグリセロゼラチンがあります.マクロゴールは平均分子量の大きさによって400(液体),1,540(半固形),4,000(固形)と6,000(固形)があり,平均分子量が大きくなるにつれて比重,粘度は増加し,融点も高くなります.これらは単独で使用されることは少なく,適当な物性や放出性を与えるために混合して使用されます. 坐剤における薬物の吸収は,使用されている基剤から薬物が放出,溶解した後に行われるため,主薬の物性だけでなく,使用されている基剤の影響を理解する必要があります.水溶性基剤が用いられた坐剤では,融解に時間を要するため油脂性基剤を用いた坐剤と比較して最高血中濃度到達時間が遅く作用発現も遅くなります.基剤に関する情報は,各医薬品の添付文書の【組成・性状】の項に記載されています.表2 4)にナウゼリンR 坐剤の【組成・性状】の項を示します.一般に,直腸内投与は経口投与よりも最高血中濃度到達時間が速いと考えられていますが,ナウゼリンR では坐剤の最高血中濃度到達時間が2 時間と遅いのに対して,錠剤や散剤では30 分と速いです(図3)4, 5).これは基剤が水溶性基剤のマクロゴールであり溶融点が50 ?57℃と体温よりも高いことからナウゼリンR 坐剤が体温では融けずに直腸内の体液で徐々に融けていくためです.経口投与が可能で即効種 類性状および特徴H タイプ● モノ・ジをほとんど含まず大部分がトリグリセリドで水酸基価が非常に低く,融点と凝固点の温度差が小さいため薬物の安定性を考えた場合に最も理想的である● 急速な冷却には脆くなる性質があり,ピンホールやひび割れなどを生じるS タイプ● 配合する主薬の分散性に優れ,乳化性があるため膣坐剤にも使用が可能であるE タイプ● 融点が体温よりも高く,37℃またはそれ以上の融点を示すので,他の基剤と混合することで融点が調節できる● 融点降下作用のある主薬を配合する場合に使用される表1 主なハードファットの特徴