ブックタイトル治療100巻1月号

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概要

治療100巻1月号

Vol.100,No.1〈2018.1〉 77患者と地域を救う 新時代の処方箋実際の地域資源処方・詳細1 患者(事例)に対する地域資源処方A . 地域資源処方① 自助グループ(断酒会,AA:Alcoholics AnonymousR) 軽度であれ,重度であれ,アルコール依存症はアルコール摂取に関するコントロールが失われている状態であり,本事例も,アルコールにより本人の心身の健康だけでなく,家族,社会へ大きな影響を与えている.中等度から重度のアルコール使用障害/アルコール依存症であれば,① 専門医療機関の受診,② 自助グループへの参加,③ 断酒薬・飲酒量低減薬の処方の3つが基本的な対処法であり1),本事例も自助グループである断酒会への紹介を行った.受診時に,医療機関から断酒会に電話をかけ,会員の方と本人に電話で話をしてもらう方法を用いることで断酒会に参加しやすくなるといわれており2),本事例も断酒会に電話をかけて,本人と話をしてもらったところ,参加に至った. 自助グループは,同じ問題を抱える仲間が集まり体験談や悩みを共有する.「いいっぱなし」,「聞きっぱなし」,「秘密厳守(聞いた話はその場限りにする)」が原則であり,体験談や悩みに関して批評したり,議論したりすることはない.断酒会とAAにはそれぞれ特徴がある(表1)が,身近でやっているかどうかが第一の選択基準である.筆者は基本的には,家族も参加でき,本人からの電話相談にも乗ってもらえる断酒会を紹介している. Aさんには断酒会を紹介し,参加してもらった.最初は,「日時を合わせるのが大変」とのことだったが,徐々に参加が習慣になり,ほかの人の意見を聞き,自分自身の思いを例会で話せるようになってきた.B . 地域資源処方② 保健センター,保健所,精神保健福祉センター アルコールの問題は依存症レベルになると,非専門職種では対応が困難となる.地域資源としての専門職はやはり保健師,社会福祉士となり,アルコールの問題では精神保健福祉士や臨床心理士が活躍する3).これらの専門職種は市町村が管理する保健センター,県などが管理する保健所や精神保健福祉センターなどに配置されており,こころの健康,未治療・医療中断者の受診相談,家族相談など幅広い相談を行っている.ときどき,アルコールを専門とする医師が相談会を行っていることもあるので,一度はつながっておくとよい. 本事例では,本人の許可を得て,妻に家族相談へ参加してもらうこととした.物理的に別々の場で相談をもってもらうことで本音がいいやすくなること,家族の本人への対応が変化することで,本人の専門医療機関受診が促進されるエビデンスもある4)ことなどから,かかわることにやや引き気味の妻も治療に巻き込み,状況の改善を図ることが重要である.Ⅱ表1 「断酒会」と「AA」の違い組織化参加条件参加者断酒会あ り実 名本人・家族AA な し匿 名本人のみ