ブックタイトル治療100巻1月号

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概要

治療100巻1月号

1新時代の処方箋 今日は外来業務の日.  高血圧で通院中のAさんに対して,あなたは1年間毎月あの手この手を使って対応してきた──ガイドラインに基づく説明,エビデンスの提示,行動変容アプローチ,家族へのアプローチ…….しかし,結局どれもこれも奏効せず,この日も何1つ状況を変えることができなかった.  日々の臨床業務は,ガイドラインやエビデンスを駆使しても,はたまた患者中心の医療や家族志向型ケアを意識しても,なかなか治療・ケアがうまくいかないという事例にあふれている. そんなときこそ,「地域」に目を向けてみてほしい.総合診療医のもつべき視点の1つとされる「地域」には,2つの意味があると考えている.1つは,“医療”,“健康”とは違った,患者さんにとってより近しい存在の,生活のパートナー.もう1つは,患者さんや家族に起こる事象の上流にあって,全体に影響を及ぼす,物事の根源である. 前者の場合,ともするとわれわれ医療者ではなく「地域」が患者を治すこともあり得よう.後者の場合,われわれ医療者が患者のみならず「地域」を治すことで,幅広く患者が救われよう.よってわれわれは,地域資源でうまく使えるものはないか,地域そのものに問題がないかと,必要に応じて患者本人から地域へと焦点を変えて対応することが望まれる.しかし,そのときにどのような理論や手段が使え,具体的な健康問題ごとにどのように対応でき得るのかを,まとめて提示した書物はあまりないのが現状である. そこで今回,総合診療医が医学的アプローチだけでは太刀打ちできなくなった患者に使える地域資源や,総合診療医が問題を抱える地域そのものに使えるアプローチについて,その理論と実践をまとめて提示することで,日常診療のアウトカムと地域の質を向上させ,「地域」のパワーを感じていただける,そんな特集を企画した.総論部分では,地域資源処方における基本知識と基本技能について理論を学ぶことができ,各論部分では,具体的な診療の場面での実践について学ぶことができるよう構成した.総合診療医の皆さんが,日々の事例で悩んだとき,この特集が何かしらのヒントを与えてくれ,「地域」により関心をもっていただけることを願っている.[編集幹事]福井大学医学部地域プライマリケア講座/高浜町国民健康保険和田診療所井階友貴地域を治す 地域を処方する