ブックタイトル治療 100巻 2月号

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概要

治療 100巻 2月号

146 Vol.100,No.2〈2018.2〉ものであるが,消化管内視鏡検査を行う予定がある場合は,視野がみにくくなり検査の妨げになるので適応をよく考慮したうえで投与する.重篤な合併症は誤嚥による肺障害や腸閉塞である.気管挿管後でも活性炭による誤嚥性肺炎が4 ?25%で生じたと報告されている.腸閉塞は脱水や腸管の癒着が既往にある症例で活性炭の繰り返し投与を行った場合に起こりやすい1).活性炭のエビデンス 前述の合併症の懸念から,中毒患者へルーチンでの活性炭投与はするべきではない.中毒物質の内容と摂取した時間,量から投与のメリット・デメリットを検討したうえで決める. American Academy of Clinical Toxicology/European Association of PoisonsCentres and Clinical Toxicologists(AACT/EAPCCT)のガイドライン2)では,「活性炭で吸着可能な物質で,中毒症状を起こし得る量の摂取後1時間以内であれば投与を考慮する」と記載している.1時間以上経過している場合はメリット・デメリットを考慮して決める.なお気道が問題ないあるいは気道確保が確実でない限り,禁忌としている. 活性炭投与で患者の予後を改善したという明確なエビデンスは存在しない2).しかし,中毒に関する研究全般にいえることだが,薬物動態は健常人のボランティアから収集したデータをもとにしており,実際の中毒患者を研究対象としたデータがなく,「活性炭の効果がない」というよりは「中毒患者に対する効果に関してはわからない」,というほうが正確だろう.活性炭投与の実際 使用量については,摂取した物質によって必要量が異なるが,成人であれば1g/kgもしくは摂取した物質の10倍量と推奨されている.実際に摂取した物質量がわからないことも多いため,実臨床上は50 ?100g投与とすることが多い. 覚醒した患者で経口摂取を促す場合,冷たいコーラに混ぜると小児でも成人でも摂取しやすかったと報告されている. 緩下剤(マグネシウム)との併用を行う施設が多いが,活性炭単独と緩下剤の併用で有用性に差はない.活性炭繰り返し投与(MDAC)について 単回の投与ではなく時間をおいて繰り返し投与することをMDAC(multiple-doseactivated charcoal)という.薬塊が形成されている場合や,徐放製剤,腸管循環する薬剤,代謝物が活性をもつ薬剤などではMDACの適応となる.詳細は専門書に譲る.ⅢⅣⅤ