ブックタイトル治療 100巻 3月号

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概要

治療 100巻 3月号

Vol.100,No.3〈2018.3〉 239地域ケアの実践知の思いに気づくことがある.通常であれば,病気の十分な回復を待ってその思いの実現を目指すが,終末期の患者の場合には「適切なタイミング」を逃してしまうと,患者・家族の思いはかなえられなくなる. この適切なタイミングは患者・家族が気づくこともあるが,予後予測を踏まえて医療者が気づき,患者・家族に伝えなければわからないものである.ここに病院からの地域ケアの第一歩がある. 最初は自分たちが対応できることから始めればよい.在宅死を押しつけず,よい時間は在宅で過ごし,最期は在宅でも病院でもいい.外出や外泊から始めてもいい.大事なことは,「客観的」に病気を把握して症状緩和の治療を行うだけではなく,患者・家族の「主観的」な病気や治療,これからに関する思いも把握し,多職種で意思決定支援を繰り返していくことである.そのなかで,できることをやればいい.終末期ケアにおける思い出づくり 終末期ケアに取り組むようになると,お正月やお花見,旅行や冠婚葬祭など,いわゆる患者・家族の「思い出づくり」にかかわることが出てくる.診療報酬や介護報酬では請求できないような支援になることもあるだろう.そのときは,病院内外の理解と仲間を増やしながら少しずつ取り組んでいこう.ボランティア的な活動に問題があるのなら,自費訪問看護でのかかわりも検討すればよい. 患者・家族にとっての大切なイベントを支援する際,医療者も大事な時間を患者・家族と一緒に共有して,楽しんで,笑って,泣けばいい. このような活動を始めると必ず批判的な意見をもらうだろう.「仕組みや制度としてできないことを,なぜそこまでして行うのか」,「ほかの患者にはできないことをなぜ行うのか」,もっともな意見である.しかし,そこで諦めないでほしい.5ケース程度続ければ,思い出づくり的な支援をすることの大切さは,自分だけでなく周囲の関係者にもわかるようになる.地域に残された不思議なつながり 半年後や1年後,もしくは数年後,ご遺族に街のどこかで再会することがある.すると,当時の大事な思い出が瞬時に蘇ってきたり,支援した思い出づくりが,家族にとって大事ⅢⅣ佐久病院地域ケア科はいのちとくらしに寄り添い,対話とつながりを大切にした活動をつうじ,安心してくらせるコミュニティの文化を住人と一緒につくっていきます.図1 佐久病院地域ケア科理念