ブックタイトル治療 100巻 3月号

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概要

治療 100巻 3月号

242 Vol.100,No.3〈2018.3〉役割から考える地域ケアはじめに 地域集団がどのような受療行動をしているのかを初めて報告したのはアメリカのWhiteら1)で,人口1,000人の成人の健康日記による記述研究であった.それによると大学病院受診はわずか1 人であった.40 年後の追試2)でも1 人と変わりがなかった.わが国でもFukuiらによる同様の研究3)で大学病院受診は6人で,追試4)でも10人と変化がなかった(図1).これらの研究からいえることは,大学病院受診患者は一般集団からするとかなりselection biasがかかっていることがわかる.大多数の地域住民はまずプライマリ・ケア医を受診しており,大学病院受診患者との質的な違いも想像することができる. 筆者はこれまで地域の一次医療機関を中心としたキャリアを積んできたため,図1にあるような数の違いを実感することができた.その一方で医学教育の観点からすると,その主たる教育の場は大学病院および大学であり,今もほぼ変わっていない.卒後初期研修で地域医療研修が必修化され,地域医療を学ぶ機会になった.その際には図1を使って地域集団全体と大学病院の違いを説明した.医学部教育にも同様の変革が起きており,2017年発表された医学教育モデル・コア・カリキュラム5)では「多様なニーズに対応できる医師」の養成が明確に打ち出された.これにより医学部や大学病院はこれまで以上に地域を意識した教育および診療実践を展開していく必要がある.本稿では大学病院と地域をつなぐための方法論を,診療面および教育面から具体的に紹介していく.また筆者が今後展開を考えている案についても述べたい.大学病院からの地域ケア02わからなければ本文を読んでみたほうがいいカモ地域在住成人1,000人を1 ヵ月間観察したときに,健康問題により大学病院を受診するのは何人か? 次の選択肢より選べ.①100人②50人③20人④10人気になる答えは論文の最後で!吉村 学宮崎大学医学部地域医療・総合診療医学講座