ブックタイトル治療 100巻 3月号

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概要

治療 100巻 3月号

Vol.100,No.3〈2018.3〉 243地域ケアの実践知health system science という第3 の医学を取り入れる これまでの医師養成は基礎医学(basic science)と臨床医学(clinical science)の2つにより組み立てられてきた.その結果,診察スキルや診療診断ができる医師を養成することができた.高齢化社会の進展や複雑化する医療制度の現代においては,診療の質改善やチームワーク,地域集団全体を捉えるスキル,リーダーシップなどを兼ね備えた医師の養成が求められるようになってきた.こうした分野の教育体系として第3 の医学としてhealth system scienceが提唱されてきており,実際にアメリカの医学部教育ではすでに導入されている6).地域ケアを提供することのできる医師を増やすためにも,この概念は不可欠である.こうした医師養成の最終的な目標としては,以下の3つが掲げられている.① 個々の患者ケアの質向上,② 地域集団の健康状態改善,③ コストの低下である.こうした考え方をしっかり理解することで,地域ケアの1つの道標になると考えている.医学生のひと言から広げていく 医学部5年生Aくんが地域医療実習(1週間)で地域の小規模病院にやってきた.担当患者Bさんを月曜日に割り当てた.B さんは50 代,男性で,糖尿病とアルコール依存症があり,血糖コントロール目的で入院になった患者さんである.病室で患者さんに引き合わせた後に彼が開口一番,「先生,2 ヵ月前に大学病院実習で担当していました.覚えています」と話した.指導医としてはハッとした.図1の理解として,大学病院受診患者と地域病院受診患者は違うという思い込みに気がついた.事実Bさんは違う病院受診を経験しⅠⅡ4 人が救急外来を受診6 人が入院7 人が訪問診療10 人が大学病院を受診206 人がプライマリ・ケア医を受診265 人が医療機関を受診794 人が症状を報告1,000 人の住民図1 人口1,000人の日本人成人の1ヵ月間の健康問題発生数と受療行動を示した図(文献4)より)