ブックタイトル治療 100巻 5月号

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概要

治療 100巻 5月号

Vol.100,No.5〈2018.5〉 581Point of Care 超音波 部位別・症候別,これだけは外せない!皮膚軟部組織感染症におけるエコーの有用性 蜂窩織炎の診断は,病歴と身体所見を中心に行い,画像検査は必須ではないと述べた.しかし,病歴と身体所見だけでは,蜂窩織炎の診断はできても,皮下膿瘍の有無まで確実に診断することは難しい.蜂窩織炎が疑われた患者に,問診と身体診察だけでなく,エコーによる評価を追加すると,皮下膿瘍の検出精度が高くなったとの報告があり1),エコーの意義は,“自覚・他覚所見が乏しい皮下膿瘍(occult abscess)”の検索にあるともいわれている2).救急外来を受診した皮膚軟部組織感染症の患者を対象としたシステマティックレビューでは,皮下膿瘍の診断において,エコーは感度96.2%,特異度82.9%,陽性尤度比5.63,陰性尤度比0.05であると報告された3). 治療においても,プライマリ・ケア外来を担当する単施設の観察研究で,皮下膿瘍の存在を診断した後,エコーで膿瘍の大きさ・位置・周囲の血管や神経などの構造物を評価すると,55%の症例で治療内容(ドレナージの方法など)が変更されたという報告がある4). 外来診察室や入院中のベッドサイドで,エコーで簡単に皮下膿瘍がみつけられたらどんなにいいだろう.エコーの所見を確認することで,より適切な治療が行えるようになるかもしれない.次に実際の検査方法を概説する. 簡単にできる皮膚軟部組織エコープローブの選択,描出方法,エコー所見 エコーで皮下膿瘍を検索することは,難しいテクニックではない.エコー初心者であっても,30分間ほどのトレーニングで感度99.2%,特異度95.5%で皮下膿瘍を検出できるようになったとの報告もある5).1 プローブの選択 皮膚軟部組織の観察には高周波のリニアプローブを使用し,Bモードで観察する.リニアプローブは皮膚から浅い部位の描出に優れており,蜂窩織炎や皮下膿瘍を検索するには適したプローブである.しかし,皮膚から深い部位の観察は得意でないため,皮膚から離れた深部組織を観察する際にはコンベックスプローブの使用を考慮する6).2 描出方法 はじめに,プローブを病変部位と隣接した“正常部位”に当てる.正常部位から観察したい病変部位に向けてプローブをslideさせながら,後述する蜂窩織炎や皮下膿瘍の所見がないかを観察する.正常部位から観察を始めることで,病変の異常所見をより認識しやすくなるといわれている6).ⅠⅡ