ブックタイトル治療 100巻 5月号

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概要

治療 100巻 5月号

Vol.100,No.5〈2018.5〉 511Point of Care 超音波 部位別・症候別,これだけは外せない!プローブで胸膜をしっかり描出することがポイントとなる. まず目に入ってくるのが,肋間に挟まれて,一段深いところにある胸膜のラインである.この上下肋骨と胸膜が形成するラインのことを,bat signと呼び,コウモリが羽を広げているようなイメージである.このbat signをみつけたら,次に行うことは,胸膜のラインが呼吸性に動いているかどうかということだ.すなわち,患者の呼吸運動に一致して,壁側胸膜と臓側胸膜がスライディングする様子を確認する.これをlung slidingと呼び,肺エコーにおいては最も重要なサインである(図2).気胸を否定できるサイン 皆さんはすでに,第二肋間鎖骨中線上にてbat singを描出し,lung slidingの有無を確認したとしよう.この時点でlung slidingが認められれば,その時点でほぼ気胸は否定できたといってよい.仰臥位の気胸患者であれば,よほどの癒着がない限り,空気は上に溜まる性質上,前胸部の第二肋間鎖骨中線上には異常な空気の迷入(すなわち気胸)により,胸膜同士のダイナミックな動きが失われるはずである.lung slidingがあるということはその部位における気胸を即座に否定できる重要なサインであり,X線を待たずして気胸の除外が可能となる. lung sliding のほかにもあと2 つ,気胸を否定できるサインを知っておきたい.lungpulseとBラインと呼ばれるものである.lung pulseについては,心臓の拍動が胸膜まで伝わることにより,あたかも肺が拍動していることを認めるサインである.Bラインは,本来は心原性肺水腫など,肺組織濃度が上昇してきたときに認める,胸膜から発生する垂直方向に伸びる減衰しないラインである.このlung pulseとBラインの2つのサインは,いずれも壁側,臓側胸膜がお互い接しあって存在することを意味しており,pleural signと呼ばれる2). 以上,臨床医としては,気胸を即座に否定できるサインとして,lung sliding,lungⅡ図2 bat signまずは第二肋間鎖骨中線上でリニアプローブをあてる.bat signが認められ,肋骨から一段下がったところに胸膜が描出される.lung slidingが認められるかどうかを判定することが気胸診断の第一歩である.