ブックタイトル治療100巻6月号

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概要

治療100巻6月号

672 Vol.100,No.6〈2018.6〉抑うつ抑うつ双極性障害とは 抑うつを訴える患者さんでは,総論で述べたように薬剤性1)を含む身体疾患を除外する必要がある(p.646).しかし,うつ病は身体疾患に併存しやすく,たとえば心疾患では約20%,がんでは約25%,疼痛では約40%に認められるといわれる2).したがって,古典的に「身体かこころか」とは言い切れない.そして,精神疾患同士の重要な鑑別に双極性障害がある.この疾患はⅠ型とⅡ型の2種があり,うつ病エピソードに加え,Ⅰ型では躁病エピソードが,Ⅱ型では軽躁病エピソードが入る.Ⅰ型は躁病エピソードのみ(うつ病エピソードなし)でも診断可能ではあるのだが,躁病エピソードのみを示す躁病患者さんは非常にまれであり,筆者は精神科医になってから3人しか経験しておらず,しかもいずれも高齢発症の男性であった.双極性障害は躁うつ病ともいわれるが,古典的な躁うつ病は双極性障害Ⅰ型を指していると考えてよいだろう. 躁病エピソードと軽躁病エピソードは,主に症状の持続期間と激しさで分類する.前者については,Ⅰ型は1週間以上でⅡ型は4日以上となっている.しかし,この期間は異論が多く,今後は短縮されるかもしれない.後者を端的に述べると,本人や周囲の生活に甚大な被害が出て入院しなければならないほどなのがⅠ型であり,被害がまだ軽く何とか外来でやっていけるのがⅡ型となる.筆者の例を話すと,ある有名な某病院から患者さんが紹介され,紹介状には「この3 ヵ月に100万ほど浪費をしました」とあるにもかかわらず,診断はⅡ型であった.それをみて「ブランド病院だと100万円でもⅡ型になるのか!」と仲間内で驚いた記憶がある.その患者さんの職種や収入から考えてもⅠ型と思われたのだが……. この躁病・軽躁病エピソードはまさに “祭りのさなか(intra festum)” とも形容され,お祭りさわぎのようにクラシカルなハッピータイプもある一方で,どこかイライラするような状態が挟まれるタイプもみられる(多かれ少なかれイライラは認められる).ほかに混合状態というのもあり,そのときは躁病・軽躁病エピソードとうつ病エピソードが入り混じっている.うつと躁とが混ざるのは不思議に感じるかも知れないが,基本的には何かしなければと焦るものの頭ばかり空回りして思うように事態が進まず不安が強くなる,そして実際に何かをしてみてもよい結果を産まない,そんな状態をイメージするとよいかもしれない.この混合状態はとくにⅡ型でみられる印象である. 筆者は,双極性障害の状態を戦にたとえることがある.うつ病エピソードは困難に対しⅠうつ病と双極性障害の鑑別宮内倫也可知記念病院 精神科