ブックタイトル治療100巻6月号

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概要

治療100巻6月号

Vol.100,No.6〈2018.6〉 715抗うつ薬・抗不安薬の前にこの方剤! 精神症状×漢方生薬)については,依存性の報告がないことが大きなメリットである.注意点としては,製薬メーカーによって,下剤的な作用がある大だい黄おうを含むものとそうでないものがあり,便秘がない患者に大黄を含んだ柴胡加竜骨牡蛎湯を処方すると,下痢をさせてしまうことがある.よって,大黄を含んだ製薬メーカーのものを投与する場合は,必ず投与前に便秘の有無を確認すること. 抑肝散も,不眠(入眠困難)に対して頓用で用いるが,この場合,「疲れすぎたときに眠れない」(この状態が典型的な副交感神経の機能低下による,相対的な交感神経の機能亢進状態である)というのが,処方する根拠の目安となる. このような場合に,就寝前に抑肝散1包,もしくは症状が強ければ2包を内服してもらうと著効例をみることがある.また,証(上記同様の,副交感神経の機能低下による相対的な交感神経の機能亢進状態)が合えばrestless legs syndromeにも頓用で処方して,有用となる場合がある. 追記であるが,これは頓用での使い方ではないが,それほど経過が長くない不眠症で,睡眠薬から離脱できない場合に,柴胡加竜骨牡蛎湯もしくは抑肝散を分1就寝前で常用して,睡眠薬を減量してゆくことはしばしば行っている.加味帰脾湯・酸棗仁湯 次によく使うのが,加か味み帰き脾ひ湯とうと酸さん棗そう仁じん湯とうである.前述した,柴胡加竜骨牡蛎湯および抑肝散は,不眠でも入眠困難によく適応することが多いが,加味帰脾湯と酸棗仁湯は,中途覚醒がある場合によく適応することが多い印象がある.入眠困難を伴っていてもよいが,中途覚醒がより目立つ病態である.そのような場合に,どちらかを頓用で用いている. この2剤の使い分けであるが,加味帰脾湯は構成生薬(漢方薬を幅広く運用,応用して効かせるためには構成生薬の把握は必要不可欠である)をみると,柴さい胡こと山さん梔し子しが入っているため,それらの薬効を考えると,上半身の熱感やイライラが強い人により適応する.さらにいうと,遠おん志じや竜りゅう眼がん肉にくも入っているために,不安感が強い人により適応する.一方,酸棗仁湯は茯ぶく苓りょうが入っているため,より胃腸が弱く衰弱感が強い人に適応する印象がある.また,知ち母もの作用により,「疲れすぎた時に中途覚醒しやすい」という場合にもより合う印象がある.例1 57 歳,女性.主訴・現病歴ホットフラッシュなどの更年期症候群に対してプラセンタ療法で軽減している.X 年1 月より,ストレスによる中途覚醒が出現.所見:BMI 21.舌,やや紅.脈,やや虚.経過:酸棗仁湯2 包を就寝前に内服し,中途覚醒が1 週間で消失.その後,時に中途覚醒あるが,その都度酸棗仁湯を内服し,眠ることができている.Ⅱ