ブックタイトル治療100巻6月号

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概要

治療100巻6月号

730 Vol.100,No.6〈2018.6〉こんな時にも! 使える漢方はじめに:禁煙治療について 禁煙は,動脈硬化やCOPD,がんなどのさまざまな健康リスクを予防するエビデンスが豊富で,受動喫煙のリスクや経済負担軽減などの視点からも,プライマリ・ケアで機会ごとに禁煙を勧めていくことは,予防医療の大きな目的の1つとなっている1).現在,禁煙治療のガイドライン2)では,行動変容のアプローチや動機付け面接などの非薬物療法のほか,薬物療法では,非ニコチン経口薬(バレニクリン(チャンピックスR))とニコチン代替療法薬(ニコチンパッチ)が主なものとなっている.しかし,禁煙によって起こりうる焦燥感(イライラ)や,バレニクリンによる不眠や不安症状,ニコチンパッチによる不眠など,禁煙治療の継続には,治療中の精神症状への対応が必要となる機会が少なくない.ガイドラインでは,焦燥感には,深呼吸や水分摂取など代償行動での対応が推奨され,バレニクリンやニコチンパッチによる副作用への対応はとくに示されていない.非薬物療法において上記のような精神症状が起こり,改善が乏しい場合に,禁煙治療の継続が難しくなる可能性もある. 本稿では,禁煙治療を,漢方薬併用によりサポートできる可能性について,紹介したい.抑よく肝かん散さん=認知症のBPSD?? 抑肝散は文字通り,異常に「昂たかぶった肝かんを抑える」漢方薬である3).この「肝」は,西洋医学的な,いわゆる「Liver(肝臓)」ではなく,東洋医学の五臓(肝・心しん・脾ひ・肺はい・腎じん)のなかの「肝」である.「肝」が異常に昂ると,興奮,焦燥感,不眠などの原因となる.抑肝散の認知症におけるBPSDへのエビデンス4 ?6)が有名になったが,抑肝散=認知症のBPSDの薬,ではなく,あくまで異常に昂った「肝」の症状の1つが認知症のBPSDであり,それ以外にも,抑肝散を投与する症状はあると考えられる.禁煙治療のサポートに抑肝散(抑よく肝かん散さん加か陳ちん皮ぴ半はん夏げ) 上記の「異常に昂った肝」の症状の1つとして,禁煙による焦燥感や,禁煙補助薬による不眠の症状も該当すると考えれば,抑肝散で緩和できる可能性があり,すでに,禁煙外来にて漢方薬を追加する意義についても報告されている7).なお,どんな焦燥感や不眠に,抑肝散が適しているかについては,初学者にはややマニアックな感があるかも知れないが,ⅠⅡ樫尾明彦給田ファミリークリニック/和田堀診療所禁煙治療のサポート