ブックタイトル治療100巻6月号

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概要

治療100巻6月号

Vol.100,No.6〈2018.6〉 637特別座談会て処方量が多いです1).厚生労働省も2018 年からの診療報酬改定でベンゾジアゼピンの多剤処方をなくしていく方針としています.ベンゾジアゼピンは依存性や退薬症状があり,なくなったときに反跳性不安,反跳性不眠などをきたし,減量や中止が難しく,耐性があるためどんどん量が増えていってしまいます2).また,ベンゾジアゼピンを服用すると日常生活で車の運転ができなくなりますので,そういった意味でも避けるようにしております.これらの理由もあり,ベンゾジアゼピンの代わりに漢方での治療を行うこともあります. 私が精神科医として使える治療方法としては,西洋薬,漢方薬,精神療法の3 つの選択肢があげられて,さらに急性か慢性か,そして患者さんが効果を待てるのか待てないのかを判断して選んでいます.漢方だとどうしても効くのに少し時間がかかります. 初期のうつ病というのはじつは非常に重要で,休職になってからSSRIを使うのでは遅いんです.男性の場合はうつ病で休職すると出世が絶たれ,家庭環境が壊れてしまう.女性の場合だと,子育てに影響したり,夫やその家族との不和になったりとさまざまな問題が出てしまいます.うつ病のスコアはいろいろあるんですけど,HAM-Dで半分になることを反応,7点以下になり症状がほぼ消えることを寛解といいます.SSRIを使用した時の1 ヵ月後の反応率,つまり,1 ヵ月後に症状が半分になる可能性はだいたい50%弱.3 ヵ月後で60%といわれています.寛解は2 ヵ月後に35%,6 ヵ月後に60%弱です3, 4).SSRI の効果が出るまでに時間がかかるので,比較的早い段階からSSRIを使うことが重要と考えています. うつ病の場合,妊娠を希望する方だとSSRIは子どもに遷延性の肺高血圧症を2 倍近く増やすというというエビデンスがあります5).宮内:ほかにも心血管の異常や発育不全のリスクが指摘されています6).自閉症スペクトラム障害とADHDのリスクについては今のところ結論が出ていません.うつ病を治療しないことによる妊婦や児への影響も懸念され,妊娠中のうつ病治療は産科と精神科がより強く連携し,患者さんとご家族とともに考えるべきです.野村:私は少しでもお子さんに対して心配だという方には漢方を優先的に使うようにしています.加えて,妊娠希望の方は実証の漢方が使えません.基本的に妊婦は虚証になります.実証のものですと下剤が入っており,お腹を下し,流産のリスクが高くなります.そこをまず注意して使っていただきたいです7).どうやって実と虚を分けているかというと,すごく簡単にお腹が強いか弱いかで聞いています.あと見た目とか.若い人ほどより実になり,高齢者ほどより虚になる,妊娠したり,がんになると虚証になるというように,いろいろルールがあります(図1).金子:お腹が弱いというのはいわゆる下痢をす虚 証?体力がなく弱々しい?体格が細くて華奢?顔色が悪く肌が荒れやすい?細くて小さな声?胃腸が弱く下痢をしやすい?寒がり実 証?体力がある?体格が筋肉質である?血色がよく肌ツヤがある?大きくて太い声?胃腸が強く便秘ぎみ?暑がり図1 実証と虚証