ブックタイトル治療100巻6月号

ページ
8/16

このページは 治療100巻6月号 の電子ブックに掲載されている8ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

治療100巻6月号

646 Vol.100,No.6〈2018.6〉総 論精神症状を診たら? 抑うつ,不安,妄想…….精神症状を診たらつい精神疾患といいたくなる.しかも原因と思われるストレスや人生の挫折などがあればなおさらである.しかし,どんな時であれまず薬剤性を含めた身体疾患を除外すべきであり,それは揺るがない大原則である.精神症状を扱う際に,身体疾患を見落とすほどの痛手はない.身体疾患による精神症状の例として,筆者の経験をいくつかあげてみよう.例1単身赴任してからミスが多くなり上司に指摘されたため,心配して駆けつけた配偶者とともに来院した30代男性.配偶者は「この人は1人で身の回りのことをしたことがないし,慣れない土地に行ったというのもあると思います」と話す.しかし男性自身にはあまり深刻味がなく,こちらの問いかけにもやや的外れな返答が多かったため身体疾患を考慮して検査したところ,神経梅毒であることが判明した.例2近医でうつ病治療がなされ寛解したため自己判断で抗うつ薬を中断した40 代男性.不安感と動悸が出てきたため近医に「再発した」といわれたものの納得がいかず中断症状ではないかと考え,自ら転院希望で来院.血液検査で見事な甲状腺機能亢進症がみつかり,治療によって症状は消失した.例3転職してから倦怠感と億劫感を覚えたため,うつ病ではないかと思い来院した30 代女性.血液検査でフェリチンが10ng/mL以下であり,鉄剤を開始したところしばらくして症状が改善した.例4残業が続いてストレスが溜まり,やる気が出なくなって頭痛もしてきたといって来院してきた30代男性.併存症に気管支喘息があり,お薬手帳では精神症状出現の2 週間ほど前から他院でモンテルカスト(シングレアR)を開始されていた.それによる精神症状と頭痛ではないかと考え,この薬剤を他剤に変更してもらったところ,症状は消失した(精神神経系の副作用は添付文書にも記載されているので要注意).Ⅰ漢方が使える精神症状,使えない精神症状宮内倫也可知記念病院 精神科