ブックタイトル治療100巻6月号

概要

治療100巻6月号

Vol.100，No.6〈2018.6〉 647抗うつ薬・抗不安薬の前にこの方剤！　精神症状×漢方　これらはいずれも出来事と症状との因果関係が推定され，ともすると身体疾患ではなさそうだと考えがちである．しかし，そういうときほど気を引き締めよう．身体疾患という器質因がある場合，ライフイベントに脆くなり症状が発露しやすくなる．しかも，身体疾患による精神症状は多彩である．甲状腺機能低下症は抑うつを惹起する有名な身体疾患だが，なんと躁状態をもたらすこともあるのだ1）．　ここに種々の精神症状をきたし得る身体疾患の例をあげておく（図1，2）．　そして，どのようなときに身体疾患を疑うか？ これは実に難題で筆者も教えてほしいくらいだが，以下の項目に気をつけよう3 ?5）．内分泌疾患甲状腺機能異常，副腎皮質機能異常（アジソン病，クッシング症候群など），性腺機能低下症，副甲状腺機能異常，膵機能障害，下垂体機能障害代謝障害ウィルソン病，尿毒症，人工透析，電解質代謝異常，心疾患，肝性脳症，肺疾患，ビタミン欠乏症（ペラグラ，ウェルニッケ脳症など），睡眠時無呼吸症候群月経・生殖機能月経前緊張症候群，産後うつ病，産後精神病，マタニティ・ブルーなど血液疾患悪性貧血，失血性貧血，白血病など膠原病全身性エリテマトーデスSLE，ベーチェット病，血管炎など図1 精神症状をきたす身体疾患の例（1） （文献2）を引用改変）中枢神経変性疾患パーキンソン病，進行性核上性麻痺，皮質基底核変性症，ハンチントン舞踏病，脊髄小脳変性症，ミトコンドリア病など炎症性疾患神経梅毒，脳炎（日本脳炎，流行性脳炎，ヘルペス脳炎，自己免疫性脳炎など），クロイツフェルト・ヤコブ病，HIV 感染症脱髄疾患多発性硬化症，急性播種性脱髄脳炎全身感染症腸チフス，発疹チフス，リウマチ熱，インフルエンザ，マラリアなど認知症血管性障害てんかん（原発性・症候性）正常圧水頭症脳腫瘍頭部外傷薬　剤図2 精神症状をきたす身体疾患の例（2） （文献2）を引用改変）