ブックタイトル治療100巻7月号

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概要

治療100巻7月号

836 Vol.100,No.7〈2018.7〉プライマリ・ケア研究での学ぶ工夫,実施する工夫はじめに 臨床研究を推進することは,日本のプライマリ・ケア領域の喫緊の課題である.とくに,総合診療専門医や家庭医療専門医を取得するためには研修期間中に研究をテーマとしてポートフォリオを書くことが必須とされており,専攻医は上級医と二人三脚で研究に取り組んでいることだろう.しかし,そうして生み出された研究プロダクトがどれほどの価値をもつか,考えたことがある方はどれくらいいるだろうか? 近年,研究方法論の専門家の間では,どのようにして臨床研究の価値を高めるかが重要な関心事となっている.2009年には85%の生物医学研究がムダ(research waste)だとの推計が報告され2),2014年にはその損失額は2000億米ドルに上るとされた3).臨床研究へ投資できる社会的資源には限りがあるため,研究者は1つ1つの研究の価値を可能な限り高めなければならない.これは,プライマリ・ケアの臨床研究でも例外ではない.ムダ研究の抑制を目指したLancet誌の特集4)では,研究の価値を高めるための1つの方法として,研究の早期から統計家を巻き込むことを推奨している.研究の価値を高めるためのポイントは複数存在するが,本稿では研究の早期に考慮すべき点のうち統計家の支援が必要な点に絞って概説する.生物統計家との連携─ 研究の価値を高めムダを減らすために─市川周平三重大学医学部名張地域医療学講座プライマリ・ケア医と臨床研究のかかわりについてどうあるべきか? プライマリ・ケア医が臨床研究を行う際は,その研究が社会にもたらす利益を最大にするために,ただ研究をするだけでなく,よりよい研究を行う必要がある1).そのために,研究の設計段階から統計家と連携することが望ましい.その際,統計解析の方法だけでなく,アウトカムや例数の設計など,研究計画の個々の要素を統計家とともに吟味することで,当該研究で抽出できる効果を増加し,バイアスの影響を小さくすることができる. プライマリ・ケア医が取り扱う研究テーマは,患者や一般市民にとって身近なものが多い.それゆえ,プライマリ・ケア医こそ価値の高い研究を行うことが求められる.