ブックタイトル治療100巻7月号

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概要

治療100巻7月号

772 Vol.100,No.7〈2018.7〉プライマリ・ケア研究の歴史とテーマプライマリ・ケア医と臨床研究のかかわりについてどうあるべきか? 筆者は,良質なプライマリ・ケア医になるために臨床研究への関与が必要条件だとは考えていない.研究などに関与しなくても,一流の総合診療医の能力を身に着けることはできる.一方で,臨床研究への関与は臨床そのものの考え方を一段高めるよい機会になるとも考えている.もしプライマリ・ケア医が臨床研究という活動を自分の人生のなかに入れるとするのなら,プライマリ・ケアの視点で生まれるリサーチ・クエスチョンを大事にするべきである.それが「プライマリ・ケア医としてこの状況をどのように理解し,認識し,価値づけするのか?」というトレーニングそのものになる.私の研究者としての歴史 筆者は1990年に医師免許を取得し,2年間の初期臨床研修(当時は制度前)を修了したのち1992年から総合診療の道を歩み始めた.その当初は自らの臨床医としての診療能力をある程度のところまで高めることに精いっぱいだった.既存の知識はいくら勉強しても足りないと感じていた.一方,診療能力にある程度自信がつき始めたとき,勉強してもよくわからないことがいっぱいあることに気が付き始めた.そして,患者をケアするうえで必要な知識というものは,いろいろな知識の断片が統合されてできているのだということについておぼろげに理解しはじめたのが医師になって4年経過したときだった.とくにそのころの筆者が日常の臨床において全くどうしてよいかわからず,そこに何らかの知恵が欲しいと渇望していたものは,「命の時間を延ばす」という目的にかなう医療介入と,「幸せな人生を過ごす,あるいは,辛さが少ない人生を過ごす」という目的にかなう医療介入に矛盾が生じた場合,いったいどのように考えてどのように方針を決めていくべきなのかということであった.そして,この疑問を明らかにしようとするプロセスを自分のなかにセットしようとしていった.そのために勉強をして,だんだん「もうすでにわかっていること」と「まだよくわかっていないこと」が,筆者が働いている医療という知識体系のなかに存在するということがわかってきた.さらに,後者の「よくわかっていないこと」について「もう少し理解したい」という気持ちが自分のなかに生まれてきた.思い返すなら,これが「リサーチ・マインド」と呼ばれるものだと筆者は現在理解している. そのうえで1995年に運よく留学の機会に恵まれ,臨床疫学,医療統計学など臨床研究Ⅰ病院総合診療医の立場から尾藤誠司東京医療センター 総合内科/臨床疫学研究室