ブックタイトル薬局69巻1月号

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概要

薬局69巻1月号

28 28 薬 局 2018 Vol.69, No.1これまでの報告急性心筋梗塞や不安定狭心症などの虚血性心疾患の治療では経皮的冠動脈形成術(percutaneouscoronary intervention : PCI)が選択されることが多く,そのほとんどの場合でステントが留置される.このステントとして1990年代にベアメタルステント(bare metalstent : BMS)が使用されるようになり,冠動脈バルーン形成術で認められるような急性冠閉塞や再狭窄が減少した.しかし,20 ~ 30%程度の確率で急性期から亜急性期にかけてステント血栓症が発生することが問題となり,予防的にアスピリン,ジピリダモール,ヘパリン,ワルファリンなどのさまざまな抗血小板薬や抗凝固薬が使用された.1998年のSTARS試験1)においては3種類の抗血栓療法(アスピリン単独,アスピリン+チエノピリジン系抗血小板薬であるチクロピジン併用,アスピリン+ワルファリン併用)を比較した結果,アスピリンとチクロピジンによる抗血小板薬2剤併用療法(dual antiplatelettherapy : DAPT)がアスピリン単独およびアスピリンにワルファリンを併用した群と比較してステント血栓症が有意に抑制されることが明らかとなった.STARS試験以来,DAPTの標準薬剤として使用されてきたチクロピジンは,重篤な肝機能障害,顆粒球減少症,血栓性血小板減少性紫斑病などの副作用が問題となり,副作用の頻度が少なく,初期負荷量投与で早期に効果を発揮するクロピドグレルがチクロピジンに代わってDAPTの標準療法として使用されるようになった.しかし,クロピドグレルは肝臓内の代謝酵素CYP2C19の遺伝子多型により薬効発現に個人差があることが問題となり,この問題点を克服するためにプラスグレルが開発された.また,近年,新規P2Y12受容体阻害薬であ虚血性心疾患治療薬抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)の構成薬を変更することで虚血イベントを増加させることなく,出血合併症を低下させることができる.DAPTの継続期間を判断する基準としてPRECISE―DAPTを用いることは有用な手段となりうる.心房細動を合併している患者のステント留置後の抗血栓療法として,高出血リスク患者では経皮的冠動脈形成術直後から抗凝固薬と抗血小板薬の2剤併用療法を考慮してもよいと考えられる.■ エキスパートが注目する最新エビデンスをアップデート! ?? ?和田 恭一国立循環器病研究センター 薬剤部 特任副薬剤部長