ブックタイトル薬局69巻1月号

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概要

薬局69巻1月号

46 46 薬 局 2018 Vol.69, No.1これまでの報告より安全で,効果の大きい薬剤が求められる反面,高齢化社会を背景とした社会保障費の増大1)により,社会全体で健康を守るという“システムの持続可能性”とのバランスを考えなくてはならない時代に突入している.“効果が大きい”の意味を臨床的な効果のみならず,社会的な効果としても考えるような広い視点をもつことが,医療関係者にはより求められるだろう.消化性潰瘍のようなコモンディジーズに対しても,医師のみならず患者の日常に深くかかわる,かかりつけの薬剤師や他のメディカルスタッフの役割がますます大きくなることが予想される.胃がん検診の全国集計によると,胃潰瘍の発見割合は年々低下しており2),これにはヒスタミンH2受容体拮抗薬(H2RA)やプロトンポンプ阻害薬(PPI),近年発売されたカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P―CAB)などの消化性潰瘍治療薬による影響が大きいと考えられる.その反面,脳血管障害や冠動脈疾患患者に対する抗血小板薬の併用や抗凝固薬との組み合わせによる,より強力な治療や予防が行われるようになり,潰瘍や出血イベントの増加も懸念される.最近,より強力な制酸薬であるP―CABが発売され,その効果を示す研究成果が発表されている.本稿では2017年に発表された消化性潰瘍に対する効果を検討したRCTを基消化性潰瘍治療薬P―CABもPPIもどちらも消化性潰瘍治療薬として有用であり,期待される効果や薬価,これまでの実績など,それぞれの利点について患者の視点を持ち込む余地がある.高齢化の進行とともに,一人の患者が多くの薬剤を服用するケースが増加するため,薬剤の組み合わせのような問題が指摘された場合には次善の薬剤の選択が重要になる.今後,新しくて効果の高い,より高価な薬剤に対する知識だけでなく,古くても効果が高い薬剤への知識も同じように必要とされる.目の前の患者に対して,本当に必要とされる効果を広い視点をもって提供するには,医療だけでなく患者の生活の視点が必要となる.医師のみならず患者の日常に深くかかわる,かかりつけの薬剤師や他のメディカルスタッフの役割がますます大きくなる.■ エキスパートが注目する最新エビデンスをアップデート! ?? ?米田 博輝弘前大学大学院医学研究科 総合地域医療推進学教室 講師