ブックタイトル薬局69巻1月号

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概要

薬局69巻1月号

78 78 薬 局 2018 Vol.69, No.1これまでの報告統合失調症の薬物療法は,大まかには急性期の寛解をアウトカムとした治療と,寛解後の再燃予防を目的とした治療とに分けて捉えることができる.しかし,そのいずれにおいても治療の中心的薬剤は抗精神病薬,すなわち中枢ドパミン神経遮断薬であって,その他のさまざまな作用機序の薬剤の使用も試みられてきたが,いずれも統合失調症治療の中心にできるほどの効果は認められていない.その中で,抗精神病薬は,強力なドパミン神経(D2受容体)遮断作用を主な標的として開発された第一世代抗精神病薬から,その後D2受容体遮断率の強さによらずに抗精神病作用を示す第二世代抗精神病薬に主流がシフトしてきたが,その中でどの薬剤が最も有効なのか,第二世代薬は第一世代薬を凌駕するのか,そして治療抵抗性例へ有効な処方があるのか,といった議論が続けられてきた.そのような問いに対して,おそらく最もわかりやすい知見を与えているのは,2013年にLancetで報告されたネットワークメタ分析1)であろう.これは15の抗精神病薬を有効性と忍容性という2つの軸で直接的または間接的に比較したもので,これによれば,他のすべての抗精神病薬に対して統計学的に有意な有効性を示したのはクロザピンである.しかし,この薬剤は無顆粒球症という致死的な副作用のために極めて厳しい処方制限が設けられており,適応が治療抵抗性統合失調症に限定されているのみならず,限られた施設でしか使えない薬剤である.そしてクロザピン以外の,その他一般的に使用可能な抗精神病統合失調症治療薬中枢ドパミン神経遮断薬である抗精神病薬が治療の主軸であり,それに代替できる薬理作用の薬剤はいまだに現れず,各薬剤間の優劣もそれほど大きくはない.初発の統合失調症であっても再燃予防のために寛解後の維持療法が必要であるとする総説があらためて報告されている.ランダム化比較試験によれば,抗精神病薬の持効性注射剤による再燃予防効果は経口剤と比較してほとんど変わらないか,わずかに有利と考えられる程度である.近年の抗精神病薬の持効性注射剤のエビデンスからは,アリピプラゾールとパリペリドンは治療からの脱落に関しては他剤と比べて有利である可能性がある.■ エキスパートが注目する最新エビデンスをアップデート! ?? 13桑原 秀徳瀬野川病院 薬剤課