ブックタイトル薬局69巻1月号

ページ
22/40

このページは 薬局69巻1月号 の電子ブックに掲載されている22ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

薬局69巻1月号

薬 局 2018 Vol.69, No.1 83 83これまでの報告選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の登場以降,うつ病治療における抗うつ薬の使用は大きく増加し,比較的軽症のうつ状態に対しても用いられるようになっている.しかし,軽症うつ病に対する抗うつ薬の効果は懐疑的である.2010年にFournier らは,メタ分析によってベースラインの重症度と抗うつ薬の効果に相関があることを示し,軽症ではプラセボに対する優越性がないと結論している1).しかし,中等症以上のうつ病に対する抗うつ薬の効果は,統計学的には有意であるとはいえ,臨床的には大きく期待できるほどとは言えない.2006年に行われたSTAR*D研究によれば,実臨床セッティングでの外来のうつ病患者にSSRIであるcitalopram(国内承認済みのエスシタロプラムはこれを光学分割したS体)を投与したところ,寛解に至ったのは28%にすぎなかった2).また,この研究は効果不十分例にその後他剤への変更や増強療法を組み合わせ4段階のプロトコルで行われたが,最終的な寛解率は67%にすぎなかった3).このことは,薬物療法単独でのうつ病治療は困難であることを示している.また,どの抗うつ薬が最も有効性と忍容性に優れているのであろうか?という問いに対しては,まずはMANGA研究を踏まえておきたい4).これはネットワークメタ分析の手法を用いてさまざまな抗うつ薬を直接または間接的に比較したもので,その結果いくつかの抗うつ薬には効果や忍容性の点で違いがあることが指摘されている.解析に組み込まれうつ病・睡眠障害治療薬さまざまな抗うつ薬がうつ病治療に用いられるが,各種抗うつ薬の効果に関する比較においては際立った違いはない.抗うつ薬の効果を臨床試験で評価するのは難しく,結果の解釈には注意が必要である.抗うつ薬が効果不十分な場合のアリピプラゾールの併用には増強効果が期待できる.欧米でそれぞれ新たな不眠症治療のガイドラインが作成されている.ベンゾジアゼピン系薬の中止方法にはさまざまなものがあるが,有益性や継続可能性はまだ明確にはなっていない.■ エキスパートが注目する最新エビデンスをアップデート! ?? 14桑原 秀徳瀬野川病院 薬剤課Feature | Evidence Update 2018