ブックタイトル薬局69巻1月号

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概要

薬局69巻1月号

8 8 薬 局 2018 Vol.69, No.1はじめに本稿ではこの1年に発表された論文のうち,プライマリケア領域においてインパクトの高い11論文を紹介したい.情報源はEvidence-Alerts 1),POEMs 2)である.選択基準は明確ではない.あえて言えば私の独断と偏見である.ただし,私自身がこれまでの医療を変えなくてはならないと思わせる論文,今後大きな変化につながりそうな論文というのが漠然とした選考基準である.動脈硬化は抗炎症へこの1年でまず取り上げたいと思った研究である.動脈硬化を基盤とする心血管疾患予防に対して,降圧薬,抗血小板薬,スタチン,抗凝固薬と役者が出そろった感があったのだが,また次なる展開を予想させる研究の登場である.心筋梗塞の既往に加えCRPの上昇がみられる患者を対象に,炎症物質インターロイキン―1βに対するモノクローナル抗体であるカナキヌマブが,プラセボと比較して,心筋梗塞,脳卒中,心血管死亡を予防できるかどうか検討しているランダム化比較試験である3).一次アウトカムの心血管疾患について,カナキヌマブの用量ごとで解析しているが,50mgではハザード比(HR)0.93[95%CI : 0.80to 1.07],150mgでは0.85[0.74 to 0.98],300mgでは0.86[0.75 to 0.99]である.この研究では有意水準を50mgと150mgの群では0.02115,300mgでは0.01058 と,多重比較の問題を考慮してか厳格化しているため,統計学的に有意な予防効果を示したのは150mgのグループだけで,微妙な結果となっている.ただこの研究では一次アウトカムでないものが脚光を浴びている.致死的な癌の発生率がプラセボ群で0.64/100人年に対し,カナキヌマブ群全体で0.45/100人年,300mg群では0.31/100人年と少ないのである.むしろこちらの結果の方が,今後の研究として大きな話題になるかもしれない.肺癌死亡も抗炎症により減る?カナキヌマブの癌に関する結果は,別の論文で詳細が報告されている4).癌による死亡率のHRは300mgのグループで0.49[95%CI :0.31 to 0.75],その内訳でみると,肺癌による死亡率が同様に300mgのグループで0.23[0.10 to 0.54]という結果である.非肺癌による死亡率においても0.63[0.38 to 1.04]と2017年論文ベストテン名郷 直樹武蔵国分寺公園クリニック 院長