ブックタイトル薬局69巻1月号

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概要

薬局69巻1月号

14 14 薬 局 2018 Vol.69, No.1SPRINT研究結果のわが国における取り扱いについてこの数年間は,2015年にNEJMに発表されたSystolic Blood Pressure Inter ventionTrial(SPRINT)研究1)の結果に関連して,降圧目標に関する話題が増加している.しかし,収縮期血圧120mmHg未満を降圧目標とした積極的降圧治療により,心血管イベント発生率および総死亡率が低下することを明らかにしたSPRINT研究で採用された血圧測定は,「患者1人を静かな環境下におき,患者自身が自動診察室血圧計により血圧を複数回測定する自動診察室血圧(automated offi ceblood pressure : AOBP)」であり,同様の血圧測定がわが国の実臨床で実施可能かは不明である.したがって,SPRINT研究の結果をそのままわが国の臨床現場に適応することに関しては慎重に検討する必要がある.日本高血圧学会は,SPRINT研究で行われた厳密な血圧測定のわが国におけるfeasibility(実行可能性)を評価することを目的とする「SPRINT―Jパイロット」を2017年から開始している2).また,2017年11月には,SPRINT研究の結果を考慮に入れた米国高血圧診療ガイドラインが発表された3).これらの動きが2019年に予定されているわが国の高血圧治療ガイドラインの改訂にどのように影響するのかが注目降圧薬収縮期血圧120mmHg未満を降圧目標とした積極的降圧治療の有用性を明らかにしたSPRINT研究では,わが国では実施していないほどの厳密な診察室血圧測定が採用されており,SPRINT研究の結果をそのままわが国の実臨床に応用する前に,SPRINT研究で行われた厳密な血圧測定のわが国におけるfeasibilityを評価する必要がある.日本高血圧学会は上記を目的とする「SPRINT―Jパイロット」を2017年より開始している.PANDA研究では,これまで実施が困難と考えられていた妊娠中の降圧治療に関するランダム化比較試験の実施のfeasibilityを明らかにした.また,妊婦の人種を考慮した割り付けが可能であることや,ラベタロールとニフェジピンとの間で,同等の降圧治療が可能であることを明らかにした.薬局で測定される薬局血圧と従来の血圧とを比較した初めてのメタ分析の結果,薬局血圧と昼間自由行動下血圧との間に有意な差は認められず,薬局血圧の基準値には昼間自由行動下血圧と同様の135/85mmHgを用いるのが現時点では妥当であると考えられた.■ エキスパートが注目する最新エビデンスをアップデート! ?? ?小原 拓東北大学病院 薬剤部/東北大学大学院医学系研究科分子疫学分野/東北大学東北メディカル・メガバンク機構 予防医学・疫学部門