ブックタイトル薬局 69巻 2月号

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概要

薬局 69巻 2月号

30 238 薬 局 2018 Vol.69, No.2はじめにがんの薬物療法を施行するにあたっては,常に薬物そのものの効果と副作用の均衡関係を念頭に置く必要がある.また,薬物の選択は臨床試験を基にした科学的根拠を有する標準治療が原則である.そして,全身状態(performance status:PS)の良好な場合(PS1 ~ 2)がその適応となる.副作用を支持療法でうまくコントロールし,PSを可能な限り高く維持し,薬物療法を長期に継続できることがそれぞれのがんの長期生存に寄与することは言うまでもない.昨今の実臨床では,併存疾患を多く有する高齢者が増加し,必ずしも臨床試験を基にした標準治療どおりの薬物療法を施行できることは容易ではなく,PSを高く保つのも難しい場合がある.ここに漢方薬治療の意義が見いだされることになる.漢方薬治療は症状が固定化し慢性化した状態で行われることが多く,直接または間接的機能異常に対して補助的に使われる場合がある.つまり,がん薬物治療の副作用軽減を目的とした支持療法に漢方薬治療は大変よい適応となりうる.しかも漢方薬は西洋薬と違い画一的ではなく,高度に進行した症例や高齢者などの各患者の状態に応じて処方できるという大きな利点がある.体力や抵抗力の低下した,いわゆる東洋医学でいう「虚証」の患者にも十分対応できる1, 2).本稿では,がん薬物療法の副作用である全身倦怠感の漢方薬治療について述べる.がん薬物療法の副作用としての倦怠感『有害事象共通用語規準 v4.0日本語訳JCOG版』によると,倦怠感(malaise)の定義全身倦怠感がん薬物療法の副作用軽減を目的とした漢方薬治療において,漢方医学的に進行がんは「陰虚証」の状態であることを考慮して方剤を選択する.補中益気湯は全身倦怠感があり,咳嗽,動悸,不安など気虚に用いられる方剤である.十全大補湯は著しい気虚と血虚のある場合に用いられる方剤である.人参養栄湯は十全大補湯の適応例に呼吸器症状が加わった場合に用いる.■ がん薬物療法の副作用に対する漢方薬の考え方と使い方?? ?太田 惠一朗日本医科大学付属病院 消化器外科 教授