ブックタイトル薬局 69巻 2月号

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概要

薬局 69巻 2月号

薬 局 2018 Vol.69, No.2 255 47はじめに近年,がん発生率は減少していないが,がん治療の発展,早期発見率が高くなり,がんによる死亡率は2000年以降,急速に減少している.つまり,「がんとの共生」時代が始まってきている.2015年末に厚生労働省から『がん対策加速化プラン』が発表され,がん治療に伴う副作用発現率が2003年から急速に増加し,最近では50%を超えており,副作用対策が急務となってきている.厚生労働省からの提言には支持療法の一つとして,漢方薬による副作用対策が強く推奨されている.診断群分類(diagnosis procedure combination :DPC)データで,悪性腫瘍を主要病名とした全国の患者の実に7人に1人で漢方薬が使用され,そのうち牛車腎気丸は2番目に多く使用されている.処方理由は,主に末梢神経障害である.一方,厚生労働省の第3次対がん総合戦略研究事業によって行われたアンケート調査で患者の70%以上は漢方を使用してほしいと答えているが,自由記載をみると化学療法の専門医で,漢方の使用を認めてくれない,漢方の処方をお願いしたら,抗がん薬の効果のみをみたいと断られたなど医療サイドの漢方に対する否定的な事例ばかりであった.この医療サイドのネガティブな考えは,漢方薬の理解不足が原因の一つと考えられる.これを打破すべく,本稿では基礎的,臨床的エビデンスおよび実際の使用方法を中心に概説する.末梢神経障害がん治療の患者の7人に1人で漢方薬が使用され,そのうち牛車腎気丸は2番目に多く使用されている.牛車腎気丸は八味地黄丸の別名,腎気丸に牛膝と車前子を加えて作用を強くしたものである.末梢神経障害は用量制限毒性であり,有効な予防法や治療法の確立は極めて重要である.抗がん薬による末梢神経障害は主に,軸索障害タイプと神経細胞障害タイプである.牛車腎気丸の薬物動態試験結果から神経保護作用を最大にするには,抗がん薬投与30分前には投与する必要性がある.■ がん薬物療法の副作用に対する漢方薬の考え方と使い方?? ?河野 透札幌東徳洲会病院 先端外科センター センター長Feature | 副作用への漢方薬活用術