ブックタイトル薬局 69巻 2月号

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概要

薬局 69巻 2月号

58 266 薬 局 2018 Vol.69, No.2はじめに抗がん薬による皮膚障害にはいわゆる薬疹があるが,近年,分子標的薬が使われるようになり,新しい皮膚障害である手足症候群やざ瘡様発疹,口内炎などもよくみられるようになった.手足症候群は手掌,足底に発赤,水疱,亀裂,角化などがみられ,激しい痛みを伴うのが特徴である.手足症候群は,QOLが落ちる患者にとっては非常に苦痛を伴う副作用と言える.本稿では手足症候群とその漢方治療について解説する.手足症候群とは手足症候群は,マルチキナーゼ阻害薬,例えばソラフェニブ,スニチニブなどの代表的皮膚障害の一つである.フッ化ピリミジン系薬剤,例えば5―FUなどが原因で生じる従来型に比べて,①投与後2~3週目に突然に出現する,②荷重部位に紅斑と痛みが生じやすい,③時に水疱や激痛を生じ歩行困難に陥る,④Wetで指紋は残存する,⑤原因薬の中断で速やかに1~2週間で回復する,⑥日本人に多い,などの特徴がある1).日米での臨床試験の比較では,グレード3以上では海外と日本国内での発生率はそれぞれソラフェニブで5.5%,9.2%,スニチニブで4.9%,21%と高く,それにより十分量の抗がん薬投与がなされない可能性がある2, 3).手足症候群の原因については,皮膚基底細胞や皮膚血管などへの直接的作用が考えられるが,詳細は不明だとされてきた4).近年,EGFR阻害薬における障害の症状や経過が徐々に明らかになってきた5).EGFR手足症候群分子標的薬による手足症候群は加重部位に角化や紅斑,水疱を生じ,疼痛が強いことが特徴で,日本人に多くQOLを著しく障害する副作用である.今回,柴苓湯と桂枝茯苓丸により著効し,治療を継続できた症例について紹介する.過去には越婢加朮湯に三物黄?湯や四物湯を併用した症例も報告されている.抗炎症,利水は柴苓湯と越婢加朮湯に共通した効能である.がん患者には癌証の治療としての補剤や駆?血剤の処方も勧められている.■ がん薬物療法の副作用に対する漢方薬の考え方と使い方?? ?蓮沼 直子秋田大学医学部 総合地域医療推進学講座 准教授/秋田大学医学部附属病院 皮膚科