ブックタイトル薬局 69巻 2月号

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概要

薬局 69巻 2月号

薬 局 2018 Vol.69, No.2 273 65はじめにがん化学療法の副作用による胸水貯留は,現状では比較的まれと考えられる.しかし近年,チロシンキナーゼ阻害薬であるダサチニブなどの分子標的薬で胸水貯留を来すことが報告され,現代医学的治療のみでは対処が困難である場合も多い.本稿では,ダサチニブによる胸水に対し柴陥湯が奏効したフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病(Ph+ALL)症例を供覧し,漢方薬併用の可能性について考察する.漢方薬の有用性を示した症例筆者らの経験した,分子標的薬ダサチニブによる胸水に対し,柴陥湯が奏効したPh+ALLの一例を提示する1).症例患者:55歳,女性主訴:胸背痛,咳嗽現病歴:X-2年1月頃より体調不良のため近医を受診.末梢血液検査にて芽球が出現していたため急性白血病を疑われ,3月某病院血液内科に入院した.精査の結果Ph+ALLと診断され,イマチニブ600mg/日が開始となった.これにより分子生物学的完全寛解に至り,続けて地固め療法が施行された.翌X-1年3月には,嘔気,下痢などによりイマチニブ不耐容となったため,ダサチニブ140mg/日の投与が開始された.ダサチニブ開始から約7ヵ月後,X-1年10月より胸背痛や咳嗽が出現し,11月に胸部単純X線画像を撮影したところ右胸水貯留を認めた.図に胸水貯留以降の臨床・画胸水貯留ダサチニブによる胸水に対し,柴陥湯が奏効したフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病症例を報告した.柴陥湯は,柴胡,黄?,半夏,黄連,?楼仁を中心として,胸部の炎症を抑え胸水貯留も改善させた可能性がある.がん化学療法の副作用による胸水貯留は,現代医学的治療のみでは対処が困難である場合も多い.本症例では,柴陥湯併用以降ダサチニブを減量することなく化学療法を継続できており,漢方薬併用の有用性を今後さらに検討する価値があると考えられた.■ がん薬物療法の副作用に対する漢方薬の考え方と使い方?? 10及川 哲郎1) 福田 知顕2) 花輪 壽彦3)1)北里大学東洋医学総合研究所 副所長 2)親仁会米の山病院 漢方内科 部長3)北里大学医学部 医学教育研究開発センター 東洋医学教育研究部門 教授Feature | 副作用への漢方薬活用術