ブックタイトル薬局 69巻 2月号

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概要

薬局 69巻 2月号

70 278 薬 局 2018 Vol.69, No.2はじめに麻黄湯は麻黄,杏仁,桂皮,甘草から構成される漢方薬で,感冒,初期のインフルエンザ,関節リウマチ,喘息,鼻閉塞に対する効能効果を有する.特にインフルエンザに対する麻黄湯の有効性を示すエビデンスは多い1).最近,がんの薬物療法による副作用で,インフルエンザの症状(発熱,関節痛,骨痛)に酷似したものについては,麻黄湯が奏効するとの報告がなされた.神奈川県立がんセンターの林明宗は,上咽頭がんの多発性骨転移に対するゾレドロン酸(ゾメタR)投与時に認められた発熱や骨痛にロキソプロフェンは無効だったが,麻黄湯は奏効したと報告している2).また,日本大学医学部の木下優子らもゾレドロン酸投与時に麻黄湯を併用することで,発熱や骨痛を緩和できるとしている3).さらに,ベイサイドクリニックの萬谷直樹らは,再発性乳がん患者のパクリタキセルの治療で生じたインフルエンザ感染時に経験するような強い関節痛を麻黄湯が軽減し,治療継続を可能にしたと報告している4).これらの報告と,筆者らが報告してきた麻黄湯のがん転移抑制作用や抗がん作用を考え合わせると,がんの薬物療法に麻黄湯を併用することは,がん患者にとってメリットがあるのではないかと考えられる(図1)5).副作用の少ない,麻黄および麻黄湯のがん薬物療法の最前線がんの薬物療法による副作用で,インフルエンザの症状(発熱,関節痛,骨痛)に酷似したものに麻黄湯が奏効する.麻黄湯や麻黄はc-Met発現がんの増殖や転移を抑制する可能性が高いが,麻黄の副作用からがん患者への長期投与は難しい.麻黄から副作用成分を除去したエフェドリンアルカロイド除去麻黄エキス(EFE)は,麻黄と同様にc-Met阻害作用,鎮痛作用,抗インフルエンザ作用を有していた.がんの薬物療法にEFEを併用することは,がん患者にとってメリット(疼痛や再発のコントロール)があると考えられる.EFEを臨床応用するためには,新規生薬エキス製剤として医薬品化する必要がある.日向 須美子北里大学東洋医学総合研究所 臨床研究部 室長