ブックタイトル薬局 69巻 2月号

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概要

薬局 69巻 2月号

薬 局 2018 Vol.69, No.2 293 85はじめに高齢化社会に伴い,認知症の患者数が増加の一途をたどっている.その中で,アルツハイマー病は,認知症全体の50 ~ 60%を占めているといわれており,理解力や判断力などの知的機能の障害やその基盤となる記憶障害を中核症状と称し,感情不安定や興奮,攻撃性,徘徊,せん妄,幻覚や妄想などの周辺症状を一括してBPSD(behavioral and psychologicalsymptoms of dementia)という.アルツハイマー病の治療の最大の目的は,患者が安心して暮らせることであるが,その目的の達成にはさまざまな手段があり,薬物療法はその一つにすぎず,薬物に対する忍容性の低下(副作用の生じやすさ)を考慮しながら,薬物の選択や投与量の調整に気を配る必要がある.抗認知症薬の一つであるドネペジルは,わが国では,2010年までは唯一の抗認知症薬であった.最も多くのエビデンスを有している薬剤であり,全重症度(軽度~高度)に保険適用を有している.ドネペジルの副作用では消化器系の副作用が強調され,添付文書中でも尿失禁の発現率は1%未満と記載されている.しかし,尿失禁が出現した場合には,患抗認知症薬の尿失禁アルツハイマー病の中核症状に対する根本的な治療法は,現時点では確立されておらず,進行を遅らせ,症状を改善する症状改善薬として抗認知症薬が使用されている.抗認知症薬には,コリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル,ガランタミン,リバスチグミン)と,NMDA受容体拮抗薬(メマンチン)がある.コリンエステラーゼ阻害薬の代表的な副作用は嘔気・嘔吐であり,NMDA受容体拮抗薬の代表的な副作用は浮動性めまい,眠気である.各抗認知症薬の添付文書中では尿失禁の発現率は1%未満と記載されており,頻度が少ない副作用ではあるが注意が必要である.頻尿は1日8回以上排尿することであり,尿失禁とは,本人が尿を出したくない状況にもかかわらず尿が出てしまう症状であるが,両者ともQOLに大きく影響する.尿失禁に対する薬物療法については,精神科治療と同様に西洋薬での治療が行われるが,西洋薬に難渋する症例では,漢方薬の使用も治療の選択肢となりうる.■ 各種薬剤の副作用に対する漢方薬活用の“経験知”?? ?長濱 道治* 河野 公範* 宮岡 剛** 堀口 淳***島根大学医学部 精神医学講座 *助教 **准教授 ***教授Feature | 副作用への漢方薬活用術