ブックタイトル薬局 69巻 2月号

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概要

薬局 69巻 2月号

102 310 薬 局 2018 Vol.69, No.2はじめに1 遅発性ジスキネジアとは遅発性ジスキネジア(tardive dyskinesia :TD)は,DSM―51)によると「神経遮断薬の少なくとも2~3ヵ月以上の使用に関連して発現するアテトーゼ様,または舞踏病様の不随意運動(少なくとも2 ~ 3週持続する)」であると記載されており,発現部位は舌,下顎,口唇などに多いが,時に四肢や体幹,食道などにも出現する2).なお,患者により抗精神病薬の急な中止・変更・減量後にこのような不随意運動が現れることがあり,その場合には離脱性ジスキネジアと呼ばれる.遅発性ジスキネジアは1年間以上抗精神病薬を服用した患者の10~20%に発現するとされ3),極めて高頻度の不随意運動である.高齢者,糖尿病患者,脳に何らかの器質的病変を有する患者で発現しやすいともいわれているが,軽度の遅発性ジスキネジアの場合には,患者自身が抗精神病薬の副作用によるものだと気づかず,クセだと思っていることもあり,主治医がしっかりと早期発見・早期治療すること,また事前に患者・家族にこのような副作用があることを理解してもらうことが望ましい.遅発性ジスキネジアの診断は,ジスキネジア様の不随意運動,少なくとも1ヵ月以上の抗精神病薬投与歴,異常運動を引き起こす他の疾患の除外などが基本となるが,視診だけでも可能である.ただし食道ジスキネジアの抗精神病薬の遅発性ジスキネジア遅発性ジスキネジアは,抗精神病薬の少なくとも2 ~ 3ヵ月間以上の服用後に発現する不随意運動である.遅発性ジスキネジアは,誤嚥や窒息・転倒などの原因となり,患者のQOL低下や生命予後を左右することさえある.軽度の場合,患者は副作用と気づかないこともあり,事前に患者・家族に遅発性ジスキネジアの存在を教示しておくことが望ましい.遅発性ジスキネジアは一度発症すると難治性であり,早期発見や早期治療,またその予防が極めて重要である.抑肝散は種々の精神疾患の精神症状にも遅発性ジスキネジアにも有効である.ただし,少なくとも遅発性ジスキネジアには4週間以上投与して初めて効果が出る場合もあることに留意する.■ 各種薬剤の副作用に対する漢方薬活用の“経験知”?? ?山下 智子* 堀口 淳**島根大学医学部 精神医学講座 *助教 **教授