ブックタイトル薬局 69巻 2月号

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概要

薬局 69巻 2月号

108 316 薬 局 2018 Vol.69, No.2はじめに骨吸収抑制薬関連顎骨壊死(anti-resorptiveagents-related osteonecrosis of the jaw :ARONJ)は骨転移を有するがん患者,あるいは骨粗鬆症患者に対して投与される骨吸収抑制薬の副作用として生じる顎骨壊死である.このARONJの主な臨床症状は疼痛,軟組織の腫脹および感染,歯の動揺,骨露出や骨壊死である.2003年にビスホスホネート(bisphosphonate : BP)製剤による治療を受けているがん患者,あるいは骨粗鬆症患者に難治性の顎骨壊死が発生することが初めて報告された1).当初はBP製剤の処方医と歯科医師との間で,病態に対する理解が十分ではなく,臨床現場においてさまざまな混乱を生んでいた.しかし,徐々に理解が深まりつつあり,顎骨壊死検討委員会※注は,予防策や対応策について統一的見解を提言することを目的として,2016年にポジションペーパー2)を作成している.しかし,ARONJ発症のメカニズムは,いまだ十分に解明されておらず,顎骨吸収抑制薬関連顎骨壊死骨吸収抑制薬を投与されている患者が抜歯などの観血的歯科治療を受けた後,顎骨壊死が発症することが問題となっている.現在のところ,骨吸収抑制薬関連顎骨壊死(ARONJ)に対する治療法は確立されておらず,患者は長期間にわたる疼痛,顎骨の露出や局所の感染に悩まされている.ARONJの治療法は確立されてはいないが,漢方薬を使用することにより,抗菌,鎮痛,免疫力の改善を期待できる.排膿散及湯は患部が発赤し熱感をもつARONJの場合に,感染コントロールを目的とする漢方薬として有効である.十全大補湯は,慢性炎症や気虚状態に伴う体力低下や免疫機能低下を改善し,長期化したARONJの治療に有効である.■ 各種薬剤の副作用に対する漢方薬活用の“経験知”?? ?大山口 藍子* 丹羽 均**大阪大学大学院歯学研究科 高次脳口腔機能学講座歯科麻酔学 *助教 **教授※注: 顎骨壊死検討委員会は日本骨代謝学会,日本骨粗鬆症学会,日本歯周病学会,日本歯科放射線学会,日本口腔外科学会および日本臨床口腔病理学会の6つの学会の共同のもとに,骨研究を専門とする内科医,整形外科医,リウマチ医,産婦人科医,腫瘍内科医,口腔外科医,歯周病医,歯科放射線科医,口腔病理医,腫瘍生物学者で構成されている.