ブックタイトル薬局 69巻 2月号

ページ
26/28

このページは 薬局 69巻 2月号 の電子ブックに掲載されている26ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

薬局 69巻 2月号

120 328 薬 局 2018 Vol.69, No.2鉄欠乏性貧血とは貧血は「単位容積の血液中に含まれるヘモグロビン(Hb)量が基準値より減少した状態」と定義され,WHOの基準では,末梢血のHbの基準値は成人男性で13g/dL,成人女性で12g/dLとされている1).貧血はその原因により,鉄欠乏性貧血,腎性貧血,再生不良性貧血などに分類されるが,最も多いものが鉄欠乏性貧血である.鉄欠乏状態が続くとまず貯蔵鉄が減少し,次に血清鉄,最終的にヘモグロビン鉄が減少し,貧血が明らかになる.すなわち,貧血に至る前の潜在的鉄欠乏状態を経て,さらに鉄欠乏が進むと貧血の発症に至ることになる.成長期の年齢層では鉄の需要亢進から潜在的鉄欠乏状態の頻度は高いが実際に貧血に至ることは少なく,一方,閉経前の成人女性は月経により定期的に鉄を喪失するため,高頻度で鉄欠乏状態にある.図 2)に日本人における性別および年齢別の血色素量の分布を示すが,20 ~ 49歳の女性では4.4%がHb 10.0g/dL未満,6.0%がHb 10.0 ~ 10.9g/dLであり,合わせて10.4%が貧血と診断され,潜在的鉄欠乏の女性はさらに多いといわれる3).一方,鉄欠乏性貧血の治療の原則は,まず鉄の補充である.また,悪性腫瘍患者について考えると,貧血の原因は栄養障害や出血,慢性炎症による造血障害,骨髄への腫瘍細胞浸潤などと多彩であるが,特に炎症性メディエータが中心的役割を担うといわれている4).主な機序として,がん細胞に対する免疫反応として分泌されるインターフェロンγ,インターロイキ鉄剤の消化器症状鉄欠乏性貧血は月経のある成人女性の10 ~ 20%にみられる.鉄欠乏性貧血の治療の原則は経口鉄剤の投与であるが,副作用として消化器症状の頻度が高く,しばしば服薬中止の原因となる.鉄剤による消化器症状を漢方方剤の併用により緩和することは可能であり,患者の状態により使い分ける.症例によっては,補血効果のある漢方薬の使用も考慮される.漢方方剤を含め,貧血治療の服薬アドヒアランスを上げる工夫が常に求められる.■ 各種薬剤の副作用に対する漢方薬活用の“経験知”?? ?小川 真里子* 髙松 潔**東京歯科大学市川総合病院 産婦人科 *准教授 **教授