ブックタイトル薬局 69巻 2月号

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概要

薬局 69巻 2月号

8 216 薬 局 2018 Vol.69, No.2はじめにがん薬物治療は薬物を用いてがん組織の縮小・除去効果を目指すものであるが,正常組織にも作用することを避けられず,種々の副作用が発生しうる.副作用の発生は一般に患者のQOLを損なうだけでなく,時に治療の中止要因ともなり,がん治療の成績に少なからぬ影響を与える.そこでがん薬物治療に対する副作用対策が重要となるが,西洋医学的な対応だけでは不十分であることが多く,近年では一部の副作用に漢方薬が頻用されるようになってきている.漢方医学は古代中国医学が6世紀頃に日本にもたらされ,その後日本人によって独自の形に発展した日本の伝統医学である.明治期の西洋医学重視政策により一時衰退したが,その後昭和期に入って復興し,医療用漢方エキス製剤が保険適用とされたことがきっかけとなって現在では医師の9割が漢方薬を処方する1)までに普及している.生薬を複数組み合わせた漢方方剤として投与される漢方薬はその発展経緯上,科学的な裏付けに乏しいが,西洋医学で対応できない病態に効を奏することがしばしばで,前述のとおりがん薬物治療による副作用にも頻用される.このため近年,漢方薬の副作用軽減効果を検証する研究結果も報告され,エビデンスとして集積されつつある.本稿では,がん薬物療法による副作用に対する漢方薬治療のエビデンスの現状をその課題とともに概説する.漢方薬のエビデンス日本東洋医学会のEBM委員会は,1986年がん薬物療法の副作用に対する漢方薬の有用性とエビデンスがん薬物治療による副作用に対して漢方薬は有用であり,その効果を実証した臨床研究結果(エビデンス)も存在する.集積されたエビデンスは日本東洋医学会がウェブ上で公開しているが,質・量の観点から不十分である.多成分で心身全体を調和させることを目的とする漢方治療においては,漢方医学的観点で患者を評価することを基本にすべきである.ただし特定の副作用に対するエビデンスを集積し,それに基づいて漢方診療を行うことはある程度有益と考えられる.小田口 浩1) 花輪 壽彦2)北里大学 1) 東洋医学総合研究所 所長2) 医学部 医学教育研究開発センター 東洋医学教育研究部門 教授