ブックタイトル薬局 69巻 2月号

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概要

薬局 69巻 2月号

薬 局 2018 Vol.69, No.2 221 13はじめにがん薬物療法を受けた患者の約40%には口内炎が発症し1),健常者が経験するものよりその範囲は広く,症状も強い.口内炎は「痛み」だけでなく,「食べる・飲む,話す」ことにも影響を与えるため,著しいQOLの低下を引き起こす.そのため,口内炎はがん診断時から終末期にかけて予防・治療しなければならない症状である.さらに,がん患者の口内炎は予定していた治療プロトコルの変更・中止を余儀なくされる場合があり,生命予後にも影響を与えると考えられている.しかし,科学的に確立された有効な予防・治療法がないため,新規治療法・鎮痛薬の開発が求められている.漢方薬は,中国で用いられている中医薬が6世紀に日本に伝わり,日本の気候風土,日本人の身体にあわせて江戸時代に独自に発展してきたものである.現在,医療保険の適用になっている漢方薬は148品目であり,そのうちの一つである半夏瀉心湯は,がん薬物療法による口内炎を軽減することが二重盲検ランダム化比較試験により明らかにされた2, 3).さらに,基礎研究では,半夏瀉心湯の作用メカニズムを解析することにより,各生薬成分がそれぞれ異なる作用点を介して効果を発揮していることが明らかになってきた.そこで本稿では,がん薬物療法による口内炎を軽減する漢方薬の基礎ならびに臨床研究により明らかとなったエビデンス,ならびに漢方薬の服用方法について紹介する.口内炎がん薬物療法による口内炎はさまざまな抗がん薬により発症し,QOLの低下だけでなく,生命予後にも影響を与える.がん薬物療法による口内炎に対する科学的に確立された有効な予防・治療法はない.口内炎に有効な漢方薬は多数あるが,その有効性を示すエビデンスレベルの高い報告は少ない.半夏瀉心湯は,がん薬物療法により発症した口内炎に有効であることが高いエビデンスレベルの臨床試験により明らかにされた唯一の漢方薬である.半夏瀉心湯は,抗酸化作用,抗炎症作用,抗菌作用,鎮痛作用,ならびに組織修復作用などさまざまな作用を介して口内炎を改善すると考えられている.■ がん薬物療法の副作用に対する漢方薬の考え方と使い方?? ?宮野 加奈子1) 上野 尚雄2) 上園 保仁1*, 3*)国立がん研究センター 1) 研究所 がん患者病態生理研究分野 2) 中央病院 歯科 医長3) 先端医療開発センター 支持療法開発分野 *分野長Feature | 副作用への漢方薬活用術