ブックタイトル薬局 69巻 2月号

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概要

薬局 69巻 2月号

薬 局 2018 Vol.69, No.3 435 35はじめにテトラサイクリン系抗菌薬は,タンパク合成を阻害することで抗菌作用を「静菌的」に示す.これは,細菌のリボソーム30Sサブユニットに可逆的に結合し,アミノアシルtRNAとmRNAとの相互作用を阻害することによる1).現在,日本で主に用いられるテトラサイクリン系薬は,第二世代テトラサイクリンのドキシサイクリン(内服)やミノサイクリン(内服,注射剤)がある.原則として,テトラサイクリンが適応となる疾患に対しては,効果や副作用の観点から,ドキシサイクリンの使用が推奨される2).しかし,日本ではドキシサイクリンの注射剤が市販されておらず,点滴治療はミノサイクリンが主に使用されている.ドキシサイクリン,ミノサイクリンのどちらも,バイオアベイラビリティ(生物学的利用能)が90~100%と高い.しかし,鉄やマグネシウムなどの(2価,3価)陽イオンと共に投与すると吸収が阻害される1).なお,両者の抗菌スペクトルはほぼ同様であるが,アシネトバクターやMRSAにはミノサイクリンの方がより活性が高いとされる2).テトラサイクリン系薬が第一選択となる疾患には,リケッチア症(ツツガムシ病や,日本紅斑熱,ロッキー山紅斑熱,地中海紅斑熱といった紅斑熱群など)をはじめ,ほかには性器クラミジア感染症,ライム病,ざ瘡,ブルセラ症などがある.本稿では,上記の中で,同等といえる他の第一選択薬のないリケッチア症で,特に日本で重要となるツツガムシ病と日本紅斑熱の薬物治療について取り上げる.テトラサイクリン系抗菌薬テトラサイクリン系抗菌薬を第一選択薬とし,同等の代替薬のない疾患にリケッチア症があり,日本では主にツツガムシ病と日本紅斑熱とがある.テトラサイクリン系抗菌薬が使用できないとき,第二選択薬のほかに脱感作療法が検討可能である.ツツガムシ病の第二選択薬はアジスロマイシンやクロラムフェニコール,リファンピシンがある.日本紅斑熱の第二選択薬はニューキノロン系薬か,使用報告はないがクロラムフェニコールが候補となる.■ 第一選択薬に過敏症歴あり! そのとき薬物治療はどう行うか?! ?? ?山藤 栄一郎亀田総合病院 総合内科 部長代理/長崎大学熱帯医学研究所Feature | 薬剤過敏症歴がある患者の薬物治療