ブックタイトル薬局 69巻 2月号

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概要

薬局 69巻 2月号

102 502 薬 局 2018 Vol.69, No.3はじめにパクリタキセル(PTX)やドセタキセル(DTX)といったタキサン系抗がん薬は,肺癌・乳癌といった罹患数の多いがん種のほか,頭頸部癌や食道癌でも第一選択薬として用いられることが多い.さらに婦人科がんでは,卵巣癌・子宮体癌の術後補助療法として標準的に用い,最近は子宮頸癌にまで使用され,婦人科腫瘍医が頻用する薬剤の一つである.しかし,その過敏症に対して適切に対応できている医師は多くなく,他の抗がん薬に変更することで治癒率を低下させている可能性もある.本稿では,タキサン系抗がん薬の歴史,婦人科がんで使用頻度の高いPTXを中心に卵巣癌におけるエビデンス,過敏性反応,即時型発症の際の適切な評価・対処・備え,脱感作療法までを詳述する.タキサン系抗がん薬の歴史タキサン系抗がん薬は,細胞内の微小管に結合して安定化させ脱重合を阻害することで,腫瘍細胞の分裂を阻害し抗腫瘍効果を発揮する.PTXは元来タイヘイヨウイチイの樹皮から単離された薬剤で,米国で1984年から臨床試験が開始され,難治性卵巣癌に著効することがわかった.1990年に米国で商標登録,1992年に卵巣癌に対し承認された.その後,ヨーロッパイチイ針葉から安価で大量に合成できる技術が開発されてイチイ供給不足問題も解消し,さらに臨床試験が進められタキサン系抗がん薬タキサン系抗がん薬は多くの固形腫瘍で用いられ,第一選択薬であれば術後補助治療など治癒を目指して投与されることが多い.パクリタキセル(PTX)およびドセタキセル(DTX)共に婦人科がんで頻用され,PTXは卵巣癌術後の標準治療薬剤である.PTX投与の際は前投薬が必須とされているが,それでも過敏性反応が軽症も含め4.7%,重症では0.7%に発生する.重症の過敏性反応発症に備え,必要薬剤の準備,さらには医療スタッフのシミュレーション教育を行うことが重要である.重症の過敏性反応を来しても,脱感作療法は手間を要するが成功率が高いため,患者の有効薬剤を減らさないためにも実施すべきである.■ 第一選択薬に過敏症歴あり! そのとき薬物治療はどう行うか?! ?? 13喜多川 亮東北医科薬科大学医学部 産婦人科学講座 病院講師