ブックタイトル薬局 69巻 4月号

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概要

薬局 69巻 4月号

薬 局 2018 Vol.69, No.5 2223 21はじめに平成28年の国民健康・栄養調査の結果では,診察室収縮期血圧(systolic blood pressure: SBP)が140mmHg以上の者の割合は男性34.6%,女性24.8%と高値であり1),人口の高齢化に伴い,今後わが国の高血圧有病者割合はさらに増加することが予想される.それに伴い,高血圧治療率も過去30年ほど上昇を続けており2),この傾向は今後も続くと考えられる.高血圧治療は高い罹患率や治療率ゆえ,わが国の医療経済に与える影響が大きく,また個々の患者にとっても経済的負担となる.降圧薬にかかる費用をなるべく減らしたい,それは誰しもが願う切なる希望であろう.しかし,その一方で,世界に目を向けると2015年の全死亡原因の第一位は心血管疾患であり,約1億8千万人が心血管イベントで死亡している現実がある3).高血圧は心血管イベント発症の最大のリスク因子であり,高血圧患者に対する厳格な血圧コントロールは医療経済学的にその妥当性が証明されている4).また,2017年11月に米国心臓病学会(ACC)/米国心臓協会(AHA)の高血圧ガイドラインが改訂され,24時間にわたる厳格な血圧コントロールの重要性が明記された5).高高血圧高血圧は心血管イベント発症の最大のリスク因子であり,高血圧患者に対する厳格な血圧コントロールは医療経済学的にその妥当性が証明されている.2017年11月にACC/AHAの高血圧ガイドラインが改訂され,診察室血圧,家庭血圧,昼間の自由行動下血圧を用いた高血圧の定義が一律に「130/80mmHg以上」に引き下げられた.利尿薬は心血管イベントの抑制効果が確立しており,かつ安価であるので,高食塩摂取という日本人の特性も考慮して,積極的に用いるべき薬剤である.Ca拮抗薬であるアムロジピンは安価な長時間作用型の薬剤であるが,強力な血管拡張による優れた降圧効果や,臓器血流保護効果を有する.また,中心血圧の低下効果や血圧変動の抑制効果にも優れる.患者の経済的負担を考慮した薬剤選択は望ましいが,夜間血圧を含めた24時間にわたる厳格な血圧コントロールが達成されることが前提である.心血管イベントの抑制や健康寿命の増進こそ,高血圧患者の真の希望であることを忘れてはならない.■ 診療のプロが考える経済的負担を減らすための選択肢?? ?藤原 健史1, 2) 苅尾 七臣1*)1)自治医科大学 内科学講座 循環器内科学部門 *主任教授2)東吾妻町国民健康保険診療所 所長Feature | 所得格差時代の薬物治療