ブックタイトル薬局 69巻 4月号

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概要

薬局 69巻 4月号

42 2244 薬 局 2018 Vol.69, No.5はじめに脂質異常症の治療に際する決断は実は極めて難解である.一般的なガイドラインで書かれていること,治療で期待される効果などについては,成書を参考にしていただき,ここでは,費用対効果に関しての考察を中心とする.「安く済ませる」の考え方脂質異常症は冠動脈疾患や脳血管疾患のような動脈硬化性疾患の危険因子の一つである.極論をするなら,できるだけお金をかけたくないのなら脂質異常症が見つかっても通院せず,薬も飲まなければよい.そもそも,検診など受けなければよい.それで,即死に至る動脈硬化性疾患(大規模な心筋梗塞)になれば,その後の生活費(住居費,食費など)は一切かからない.しかし,残された家族の精神的苦痛や,家族の生活の負担,負債が残っていた場合への連帯保証人への影響が発生する(本人にかかる負担ではないが).一方で,即死に至るならまだしも,脳卒中で重度麻痺の状態になれば,治療費,療養費,介護費用,介護負担などの費用負担はかえって大きくなる.自動車でも最初の出費を渋って安い中古車にしたばかりに,むしろ修理費・維持費がかかるというのはよくある話だが,上手に買い物をすれば,安い中古車でもメンテナンスフリーでいけるかもしれない.頻繁な修理費・維持費を嫌って,奮発して新車にすると,維持費は安いかもしれないが,上手に中古車を探せば初期費用がもっと安くに済んだのかもしれない,という疑念は残る.脂質異常症「 お金をかけたくない」は費用対効果で考えるが,費用も効果もどこまで含めるかは個人,社会の価値観による.なぜ治療するのか? また治療しないのかについて本人とよく話し合うしかない.脂質異常症は単独で考えず,主要な動脈硬化の危険因子の一つとして総合的に考える.脂質異常症の「正解」はまだはっきりわかっていない部分が多い(特に一次予防).成人全員に対して検診の一環として脂質異常症を調べることは割に合わない.原則,一次予防は薬物療法不要(例外あり),二次予防はスタチンを高強度で内服が最も費用対効果が高いと考える.■ 診療のプロが考える経済的負担を減らすための選択肢?? ?岡田 唯男鉄蕉会 亀田ファミリークリニック館山 院長