ブックタイトル薬局 69巻 4月号

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概要

薬局 69巻 4月号

50 2252 薬 局 2018 Vol.69, No.5はじめに「患者さんの経済的負担をできるだけ軽減したい」という本特集のタイトルをみて,精神科医である筆者は2つの言葉を思い出した.第一は選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)であるパキシルR(パロキセチン)が発売され,処方した時の「あの薬は高いので,元の薬に戻してほしい.元の薬より効果が強いとは言えないと先生は言ったし,副作用が少しくらい多くてもかまわないから安い薬にしてほしい」という患者の言葉である.向精神薬はそれほど高価ではなかったためか,患者から値段のことを言われるようになったのは抗うつ薬ではSSRI,抗精神病薬ではいわゆる新規抗精神病薬が発売されてからのように思う.第二は「抗がん薬は収益性が高いですね」と腫瘍内科の医師に言った時の,「服用期間を考えたら,向精神薬や一生飲む抗認知症薬と変わらないですよ」という彼の返事である.薬剤の経済性において,効果や副作用だけでなく,服用期間も考慮されるべきことは言うまでもない.本稿では,うつ病治療において,患者の経済的負担をできるだけ軽減したいと考えた時に思いつくことを挙げてみたい.すぐに対応すべき課題1 軽症うつ病には抗うつ薬が有効ではないうつ病に対する抗うつ薬の効果を議論する上で,2つの重要な論文を挙げる.第一は日本で実施され,2009年に発表されたミルタザピン( レメロンR,リフレックスR)の治験である1).かつて抗うつ薬は,「標準薬に対する非劣性か優越性の検証」によって治験が行われてきた.本試験は,うつ病およびうつ状態の患者を対象とし,治療開始時から薬剤としての活性のないプラセボと実薬とを比較すうつ病うつ病において,患者の経済的負担を軽減させるために検討すべき問題を示した.すぐに対応すべき抗うつ薬の問題に,軽症うつ病に対する効果,薬価と有用性,多剤併用,不適切な継続,退薬症状の診断などがある.時間をかけて対応すべき問題として,医療機関の収益性,面接にかける医療費,維持療法期間,新規薬剤の必要性を取り上げた.■ 診療のプロが考える経済的負担を減らすための選択肢?? ?宮岡 等北里大学医学部 精神科学 主任教授