ブックタイトル薬局 69巻 4月号

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概要

薬局 69巻 4月号

薬 局 2018 Vol.69, No.5 2257 55膨大な処方リストと在宅医療急性期治療を終えて自宅へ退院することが決まると,訪問診療の依頼がわれわれのもとへ舞い込んでくる.東京の住宅地にあるクリニックでは,認知症高齢者や終末期の新規在宅医療導入依頼は毎日のようにある.みなADLが低下し,通院が困難となった患者だ.なぜかこうした患者は大抵,処方薬リストが膨大である.そして,これまでの長い病歴があるだろうが,たった1枚の診療情報提供書からは個々の薬剤の処方理由は読み取れないことが多いものである.中には断片的な情報から処方理由が推量でき,了解可能なものもある.しかし,不思議なことに,どう考えても必要のなさそうな薬も多いものだ.在宅医療の最初の仕事は,処方薬の整理からと言っても過言ではない.アウトカムの重要性例えば,認知症が進行して経口摂取すら困難となった高齢者に,水分よりも優先すべき薬などあるだろうか? 残された期間を自宅で穏やかに過ごしたい,そして安らかに最期を迎えたい,そんな想いで帰ってきた人にとって,必要なものは薬なのだろうか?想定される死期までの限られた暇に,医療者は何をすべきなのか.アウトカムは何か.医療者は問われているのだ.ただ薬の処方をすることが医療の目的ではなかったはずだ.私たちは薬で解決できない問題から,目を背けてはならないのだ.認知症に対する薬物療法の効果と害アルツハイマー病に対する治療薬は国内で認知症・BPSD想定される死期までの限られた暇に,医療者は何をすべきなのか.アウトカムは何か.医療者は問われている.認知症のコリンエステラーゼ阻害薬による治療とは,言い換えれば,有害事象や費用と認知機能スコアとを引き換えにすることだ.介護負担は経済的負担に直結するものである.認知症の行動・心理症状(BPSD)の抗精神病薬による治療とは,言い換えれば,時間(寿命)と介護負担とを引き換えにすることである.■ 診療のプロが考える経済的負担を減らすための選択肢?? ?福士 元春武蔵国分寺公園クリニック 副院長Feature | 所得格差時代の薬物治療