ブックタイトル薬局 69巻 4月号

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概要

薬局 69巻 4月号

薬 局 2018 Vol.69, No.5 2261 59はじめに「所得格差時代の薬物治療」,こんな切り口が!と非常に興味をそそられるテーマである.さまざまな格差が広がる現代社会において,こういった経済的側面に着目した特集は非常に重要と考えている.医療は日進月歩であると同時に,その医療費もまた年々うなぎ登りの状態である.消化性潰瘍は上部消化管出血の最も頻度の多い原因であり,消化管出血関連の入院の約60%を占めるといわれている1).また,出血した消化性潰瘍患者の入院医療費は米国で推定20億ドルと報告2)されており,多くの医療費を必要とする疾患の一つである.本稿では,消化性潰瘍の診療を振り返りながらいかに経済的負担を減らせるかという視点で考察する.消化性潰瘍の歴史まず,経済的負担を考える前に消化性潰瘍の歴史について概説する.なぜ歴史か?と言われれば,個人的に歴史が好きということもあるが,医療の進歩と医療費は密接にかかわっており,歴史から学ぶことは重要だからとも言える.われわれはどの時代まで戻れるのか? その歴史を紐解いてみよう.1 症状の認識消化性潰瘍と思われる症状を初めて記述したのは,おそらくヒポクラテスだろうといわれている.ヒポクラテスは,「腹痛があって,動物の血のような匂いのある黒色の吐物を吐く病気(Morbus niger)」について記述しており,これが現在の消化性潰瘍だろうといわれている.当時は,このような症状の患者に対して,日光を避け,運動や温浴を禁止し,消化性潰瘍消化性潰瘍の診断と治療はめざましく変化した.治療効果はプロトンポンプ阻害薬が勝るが,ヒスタミンH2受容体拮抗薬も有用かつ安価である.潰瘍治療期間を意識し漫然と潰瘍治療薬を継続しない.NSAIDs/低用量アスピリンの中止,ピロリ菌除菌が重要である.内視鏡検査の過剰使用にも気を配る.■ 診療のプロが考える経済的負担を減らすための選択肢?? ?矢吹 拓栃木医療センター 内科医長Feature | 所得格差時代の薬物治療