ブックタイトル薬局 69巻 4月号

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概要

薬局 69巻 4月号

78 2280 薬 局 2018 Vol.69, No.5受診しなければ,ノーコスト感染症領域で患者の経済的負担を減らすための最良の方法は,まずは「不要な医療機関の受診をなくす」ことであろう.急性上気道炎,インフルエンザやインフルエンザ様疾患(influenza-like illness : ILI)は基本的に自然治癒する疾患である.軽症の急性中耳炎,急性副鼻腔炎,急性下痢症なども大多数では自然治癒する.よって,普段の健康教育が大事となり,(特に基礎疾患がない場合は)急性発症の上気道症状で,飲水がしっかりできる,排泄がしっかりできる,歩行や着替えなどの日常行動が問題なくできる(このことはバイタルサインが大きくは乱れていないであろうことを示唆させる),発症数日以内,であれば自宅で休養してみだりに医療機関を受診しなければよい.そして,受診すべき条件(すなわち,上記条件の破綻)を教えればよいのだ.これだけで相当の経済的負担を減らすことになろう.例えば,インフルエンザで受診する場合,医療機関のタイプにもよるが,受診,検査から治療まで費用は950点,健康保険3割負担だと3,000円程度となるという(http://医療費の知識.kirameki33.net/病気の治療にかかる費用/インフルエンザの診療にかかる医療費/).検査と治療はMustではない仮に上記の条件で受診した場合,次に考慮したいのは検査,そして治療を減らすことにある.例えば,インフルエンザの場合,事前確率が十分に高い場合と,十分に低い場合はインフルエンザ迅速診断キットを用いるのは合理的とは言えない.前者であれば検査陰性でも「インフルエンザ」と判断するであろうし,後者であれば,その非典型的な(多くは軽症の)症状に抗インフルエンザ薬を用いる合理性は低い.ノイラミニダーゼ阻害薬に代表される抗インフルエンザ薬は,有症期間を1日程度短くしてくれるのがその薬効である1).それは立派な薬効であり,その価値そのものを否定する必要はないが,症状が軽くなれば感染症必要なければ受診しないのがよい.検査と薬を常態化しない.撲滅できる感染症はあるかも.■ 診療のプロが考える経済的負担を減らすための選択肢?? 10岩田 健太郎神戸大学大学院医学研究科 感染治療学分野 教授