ブックタイトル薬局　69巻　4月号

概要

薬局　69巻　4月号

薬 局　2018 Vol.69, No.5 2291 89わが国におけるフォーミュラリーの重要性医療費は2014年度に40兆円を超え，毎年約２%ずつ伸びているのが現状である．薬剤費は10兆円を超えているともいわれている．後発医薬品の使用が促進され，2017年９月時点の速報値で65.8%となり，政府は2018年までに使用割合を80%の達成を目指している1）．しかし，いわゆる2025年問題を７年後に控え，後発医薬品促進だけではない，抜本的な薬剤費の抑制政策が必要となる．フォーミュラリーは薬剤費抑制のカギを握っていると考えられている．フォーミュラリーの概念初めてのフォーミュラリーは，1940年代に米国の病院内の薬剤部において単純な採用薬リストとして登場した2）．その後，米国連邦機関が医療費の還付などにフォーミュラリーの作成を義務づけた1960年代からフォーミュラリーの概念は劇的に変化していく．その頃，病院薬剤師はフォーミュラリーを使用して，初の薬剤師による後発医薬品への自動切り替えを始めた3）．さらに，JointCommissionが認定の要件として，院内に薬事委員会［Pharmacy and Therapeutics（P&T）committee］の設置を求めたことからフォーミュラリーの概念は発展していった．現在，米国においてフォーミュラリーとは，疾患の診断，予防，治療や健康増進に対して，医師をはじめとする薬剤師，他の医療従事者による臨床的な判断を表すために必要な，継続的にアップデートされる薬のリストと関連情報と定義される2）．フォーミュラリーには，①採用薬ならびに関連する機器のリスト，②薬の使用手順書，③重要な医薬品情報，④臨床上わが国におけるフォーミュラリーの重要性と今後の課題薬剤費の抑制の対策としてフォーミュラリーはカギを握っている．フォーミュラリーの概念は，単純な採用薬リストではなく，薬の関連情報を含んでいる．フォーミュラリー導入の有用性は，経済性にとどまらない．米国の病院フォーミュラリーは採用薬管理に加えて，医薬品の適正使用を含む．フォーミュラリー管理には，臨床薬剤師の育成が必要不可欠である．■ エビデンスと経済合理性に基づいた薬剤選択指針“フォーミュラリー”の基礎と実践?? ?前田 幹広聖マリアンナ医科大学病院 薬剤部　係長Feature　| 所得格差時代の薬物治療